第5話 廃棄場でのお仕事

まあ要約すると汚染物質垂れ流しているので防護服を着て運び清掃作業に入るという内容だ。

廃棄された魔道具は清浄終了後棄却場にて分解されマナに返すという作業を行わなければならないらしい。


綺麗にし無害化した魔道具の残骸は持って帰っていいかと聞いたら「何言ってんだこいつ」みたいな顔をされたが特に問題はないようでOKされた。


リサイクルではなくマナへの還元だったり魔道具をもって帰っていいというあたりクオーリアの言う通り消費社会の究極みたいな場所だなとわかる。


要らないものはゴミでマナにするのも自然に返すわけではなく汚染地域の拡大を防ぐため廃棄場自体場所を取るから分解して処理するというなんとも真面目にもったいないというか。


それほどに資源豊富ということがわかる。


流通や交易が盛んな分後処理への無頓着ぶりの結果が今の廃棄所というわけだ。

ある意味羨ましい。俺の世界では資源が足りな過ぎて発展にあえいでいるというのに




洗浄を終えた魔道具の残骸を組み立てなおし改造。

ガントレットに組み込んだ

使える部品に絞り洗浄し部品を組み立て上げ魔石の数を増やして並列させる


それによりエネルギーを製造する部分の構築が完成する。他にも廃棄された魔道具を見て調べる。


「これは伝導性が高いからツールに使える。詳しく分解すればチップの一部に使えそうだ。しかし良かった。元々の魔道具自体構造がわかりやすくて助かる。汎用の幅の広い素材も多いしここを資金源にしなきゃな…その為体力づくりと…」


ガントレット起動。腕の強化外骨格として成立したガントレットは機械の連動により鋼の筋肉として機能する。

てこの原理を応用したタイプで支柱部分をかみ合わせ大きな力を生む昔ながらのパワードスーツ。

本来なら筋肉繊維型の方が金属疲労がなく長持ちするのだが今は仕方がない。

これを用いてズルをする。


重たい魔道具を片手で持って運び出す。太陽が出ているので魔石の消耗が許す限り力を行使できる


たださっきも言ったように金属に負担をかけるタイプの為壊れやすいのが欠点だ。しかも柔軟性の高い素材が少ないため負担も大きい。


洗浄した魔道具をばらして改造を重ねながら強度と耐久性を上げていく。

そして魔道具を使ったとバレないようあまり目立つようには使わない。


その為もやしの俺にとってかなりのハードワークで終わったころに自分が生きているのが不思議なくらいだ。



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そうこうして5時間後



死ぬほどの空腹二回目。俺死ぬ


「はぁーやるじゃねえかお前さん」


と作業が終わった後衣服を洗浄して糸が切れたように倒れた俺の近くで

一緒に作業作業していたおじさんの声が上から聞こえる


突っ伏しているが声で誰かは分かった。

すんませんズルしてるんですよ俺と心の中で謝罪する


「体付きがあんま貧弱なもんだからと思ったがお前さんやるなぁ」


「いや…もう死にます…死ぬ」


「いや頑張った頑張った。お前さんみたいなやつが回されるとは清浄業もヤキが回ったと思ったがね。なかなかどうして動けるもんだ。ほれ、これ食って元気出せ」


とおじさんの持っている弁当を見て腹の虫が鳴るが

どうみてもおじさんの今日の飯であるそれに対し衝動を理性で押さえつけた


「いや。それはあなたの…」

「いんだいんだ。俺くらいになれば飯ぬいたぐらいで死にはしねーよ

だから遠慮すんなって」


ほれほれと突き出される弁当を前に俺は即座に手を伸ばし貪り食う

両親の呵責とかいろいろあるがただ今はエネルギーは欲しい。


バクバクと汚らしく食っているさまを見て

良い食いっぷりだと笑うおじさんマジ良いお人だな。感謝。

名前はアインベルクさんというらしい


「すみません…弁当持ってきてなかったばっかりに」

「別にいいさ。休憩で飯出ると勘違いしてクチだろ?俺もそうだったから

助け合いよ。俺も先輩に奢ってもらってな」

「はい、ギルドは初めてなもので…」


なめてかかっていたわけではないし過酷なのも覚悟していたがそんなものは実践の前では無意味だと理解できる。


現実にきつい状態になるとあらゆる物事に対し冷静になれないことを痛感し元の世界が裕福だったことがわかる。


心のどこかで何とかなると思っていた自分が恥ずかしい。


ご飯は忘れたというかギルド代しかもらっていなかったので変えなかったのが正しい。おのれクオーリア…。


まあ彼女がこの仕事をしているとは思えないので知らなかっただけだろう


「だろーな。もっと肉付けなきゃ苦労するぜ。で、お前さんは何でギルドに?そんなに金に困っていたのか?」

「ええまあ…、ここに来たのもつい最近で」

「てことは上京か。ここは大変だよなぁ!」


ガハハと豪快に笑うおじさんに対しつい自分も綻んでしまう

確かにこの貧弱さじゃこのまま仕事を続けられる気がしない


嘘は言っていないがだましている気がして気が引ける。


このままガントレットをばれないままやり過ごすしかないがそううまくいくとも限らないと想定。空腹を満たして頭の回転が働いて冷静になれた


どうみたって俺は雑魚の体だ。そいつが仕事場で活躍していたら不審に思うだろう


なら他の仕事を探すしかないだろうがここにはお宝が眠っている。

辞めたい気持ちをこらえて未来を見据える。青写真を描き展望を見なければ続けられない。


はぁっと弱音のため息を押し殺してストレス発散にちょっとおじさんに尋ねてみる。会話する力はあまりないがストレスを解消する術にはなる


「おじさんはどうしてここに?」

「まー俺もやんちゃして金なくしてよぉ。いつの間にかここの常連ってわけさ。

この仕事は実入りが良い。危険な分教養がなくても就ける仕事だからな

まあハンターの方が危険だからってイモ引いたわけさ!ハッハッハ」

「ハンターの方が儲かるんですね。そんなに危険なんですか?」

「応よ。死と隣り合わせでいつ死んでもおかしくない仕事よ。

ここも下手すりゃそうなるがまあそれに比べりゃな。ちゃんと安全対策もしてるしな」


魔道具から発せられる汚染物質を遮断する専用の衣服が用意されている分安全であるとおじさんは言う。


予想はしていたがかなり危険な作業らしいがその分需要と供給が伴っている。


つまりこの仕事は土木作業や炭鉱勤めと変わらないということだ。

ますます辞められる気がしなくなった。

ここ以外で魔道具が落ちているとは思えないし他の仕事で生き残れる気がしないと意志を固めた



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会話を終え報酬をもらいギルドから出ようとすると

列に並んでいた魔法使いらしき少女が目に入った。

俺に視線に気づくとぴょこぴょこと近づいてくる


「どうだった?」

「死ぬかと思った」

「だろうね。でも生きてる」

「おかげでね。ズルしてるからな」


同じ職場ではないと思うしガントレットの事を暗に伝える。


これがなければ全く作業できなかったといっても過言ではない。


「パワーアップしてる。それ」

「ちゃんと除染はしてるぜ」

「なら、貴方の力。ズルじゃない」

「いやいや、ズルだよ」


褒められても結局他の人より楽していることは変わらない

そして再び彼女は俺のガントレットを眺める

じー・・・

じー・・・

じー・・・

「じー・・・」


突っ込み待ちかな?でも疲れているので突っ込みする労力は割きたくない


「あのさ、俺疲れてるから悪いけど帰っても良いかな?

連れ待たせてるし」

「わかった。じゃ、これ」


そういってぽんっと俺の手に紙を置いてすたすたと帰っていく少女

紙には住所らしきものが書いており俺と話している間に書いたものではなさそうだ

つまり、彼女は俺を待っていたという事になる


「…物好きだなぁ」

去っていく少女を見ながらそう呟いて

俺はクオーリアの待つ宿屋への帰路へ向かった。


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バージョンアップを重ねて大気中の酸素と水素を圧縮融合させ電気を送るタイプも追加。結構ガントレット君の装備が充実してきた。√46の8乗の法則最高。

などと先人の知恵にあやかる


紙を渡してきた彼女はイーナという名前と書いてあった。

彼女が何者かは分からないがだましている様子はない。


ま、何はともあれ今日は疲れたし休もう。などと思っていたら



「よう兄ちゃん。金持ってそうだな。くれよそれ」



ナイフを持った数人の男に囲まれた。ガントレットを見て金目の物を持っていると考えたらしい。これは相場いくらになるんだとのんきに考える


はー…想定してたとはいえ…思ったより早く使うことになったな…などと思ってしまう。それを挑発だと捉えたのか男の声に怒気が灯る


「おいおい、何のんきなツラしてんだ殺すぞ」

「見逃してほしいんですけどダメですかね?」

「あ?寝ぼけてんのか?目え覚ましてやるか?死んだらそうならねえがなぁ!!」


そう言ってナイフで切り掛かってきたので不承不承ながらガントレットでナイフを掴み握りつぶす。重さ160キロのものさえ軽々と持ち上げられる代物だ


ナイフ如きでは歯が立たない。そして同時に俺はガントレットを中心にアーマーが展開され外骨格を見にまとう。


これが進化した試作型ガントレットの完成版


質量保存を無視したようなガントレットから生み出される金属の板が

互いの衝突音を交えてアーマーとして構築される


それは廃棄所のあり合わせで作った代物で目立つ為に使わなかった別世界での俺のパワードスーツだ。


見かけは鉄のブリキ人形だが確実にこいつらを蹴散らすほどの威力を誇り強化された体で相手の武装を剥ぎ取り握りつぶす。そうすることによる戦意喪失


さらに帰り道に街灯がなかったために見える明かりはガントレットの魔石か眸部分のアーマーのみで威圧感として十分だろう。


その様を見て悲鳴を上げ脱兎のごとく逃げ出す野党たち。


まあ運が悪かったと思って諦めてくれ。

質量無視ではなく収納するためのプランク定数による空間を疑似的に展開することでガントレットに格納を可能としこのアームズは今ある俺の最高戦力だ。


身体能力強化しか使えないため他の武装は取りつけられなかったが…まだまだ外付けパーツや戦力強化も見込める。


まだ魔力の方程式や元素は理解できないが魔道具の構成やこの世界の法則は元の俺の世界と大差がない事が確認できただけでも上出来だ。


これなら十分武器が作れる。


「初陣は上々…さて帰るか」


外骨格をガントレットに収納しあいつらには悪いが

アームズをうまく使えたこととうっぷん晴らしとなったので


満足げに俺はクオーリアの言った宿屋へ足を向けた







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