第4話 下準備と活動拠点

「まず、俺は今のままでは無能無力だ」

「それって偉そうに言える事かぁ…?」

「そういえばクオーリアはたまに変な口調になるな?」

「ああコレ?舐められない為よ。でも今じゃこんがらがってんだけどね」


まあ複雑な事情があるという事はある程度察せた。まあそれは今の俺が何とかできる事案じゃない


「まあそれは個人の自由だと思う。今は俺の拠点。ラボが必要だ」

「らぼ?」


「魔法の工房だと思えばいい」

「なるほど、魔道具を作る場所ね」


「だが俺にはそのつてがない。それ以前に無一文だ

だから地道に資金を増やし機械を作る材料を集めなければ

俺は真面目に雑魚だ」

「私にその協力をしてほしいって事?」

「出来る範囲やってほしい。そうしないと俺が死ぬ」

「胸張って言う事じゃないだろ」


「まあともかく俺には拠点と科学…錬金術の工房が必要だ

その為に…」

「その為に…?」


「ガラクタ集めだな。廃棄された魔道具や錬金術の出来損ない

そこから価値のある部分を取り出して売るんだ。出来ればそれも素材にしたい」

「地道ね。まあ妥当だと思うけどうまくいくかね…」


「当たり前だ。絶対にやらなきゃ俺に未来はないからな」

「そういやその自信どっからわいてくるのよ…。うまくいくかわかんないのにさ」

「え?だって俺天才だぜ?出来るに決まってるだろ」

「・・・・・・・・・」


それはクオーリアにはない自負だった

大した才覚のない彼女は求道を極め稚拙な魔法を強化することに専念した努力家だ


失敗なんてザラで成功なんてたまにあるかない程度。だからこそ彼の気持ちがわからない。まるで世界が自分中心にいるような自身に満ち溢れている


それは天才だから。頭がいいという事は分かったが実際どの程度かクオーリアに知る術はない

だが不思議と彼女は彼の言葉を信じられた。過剰な自信は経験則によるもので

例え挫折しても頓挫しても諦めない精神性は読み取れる


「なら、私も協力する。さっきも言ったようにその力にあやからせてもらうぜ」

「逆じゃね?俺はクオーリアの助け前提で話を進めていたんだが」


「何よ。私が協力しなかったらどうするつもりだったのよ」

「何って、死ぬだけだが」

「・・・っ」


今までの会話からわかっていたが彼は死生観に対しドライだ

死ぬ状況だから死ぬのは当たり前だ。生き足掻いても死ぬなら死ぬだけ


だからこそ成功に対し邁進できるのだろうが。

この男は危うい。仕方ないで割り切るのが普通な異常者

天才となんとかは紙一重というが彼の場合両立している


失敗に臆さず失敗すればリスクを負うというのが基本構造とそれは人間ではない

何か無機質な…人の形をしているが体が金属で構築されているような不気味感がある


だからこそ、さっき知り合ったくせにある程度分かってしまったから放っておけない気がして

「なら協力するわよ。その代わり君の知恵と技術をくれよ?」

「当たり前だ。それ相応の対価は払うさ」


――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――

―――――――――――


砂漠の町。クオーリアが乗っていた魔獣を見て興味津々な洋平の首根っこを掴み

心当たりがある場所へクオーリアは魔獣に乗って移動する


「なあ、どこ行くんだ?」

「何って君が必要なものがある場所さ。ありがたく思えよ」

「当たり前だ。その分のお返しをする」


向かう先は活気に満ちた街。消費の文化の象徴たる『キヨーミガ』へ彼らは向かう。

水分補給と日射対策の為の衣服を洋平にまとわせ移動スピードを調整し半日足らずでその街へ到着した。砂漠地帯に隣接する街。日差しよりも暑い熱気と活気にあふれたその街は繁華街を思わせる。


「ここになにがあるっていうんだ?」

「ここはキヨーミガ。あらゆる欲望が渦巻きあらゆる欲望の残骸が埋まる場所

競争社会ってやつね。多く物品が流通する分廃棄される魔道具も多い」

「・・・つまり俺が求めていた場所ってか?」

「そう、ここを拠点に考えてもいいかもね」

「でもこういう場所って土地代が高くないか?」

「まあそうね、洋平の稼ぎ次第ってとこ」

「流石にしょっぱなから金を発生させることは出来んぞ」


天才の俺とは言えいきなり一攫千金を狙うほど馬鹿じゃない

ラボやそれを設置する機材に広い範囲の土地など早々手に入るわけがない

だが資金源がここに埋まっているというのも事実。あまり打算的ではないが博打をうつか


「まあ私は宿屋を手配しておくから洋平はギルドで魔道具処理の仕事を頼みなさい

流石に無断でやったら違法だから」

「わかってるよ。俺の事を非常識人扱いしないでくれ」

「はいはい、じゃ、ここで一度お別れね。宿は『ミクニ庵』って場所でここから南西30メートルの場所にあってギルドはここから東に一直線の場所に『メージ』って場所があるから迷わないで行きなさいな」

「色々ありがとな。収穫楽しみにしておけよ」

「期待せずに待ってるから」


そう言って俺たちは各自別れ俺はクオーリアから路銀を貰いギルドへ歩いていく

その過程で様々なものを見た。元の世界とは似て非なる文化。


魔法が発展し科学が存在しない世界。だが用途は科学と大差なくファンタジーな感じはしない。使い捨ての魔道具が売っており粗製品だというのが理解できる。


それを相場より高めに売っている店。客足が少なく寂れた店もあり今にも潰れそうだ。確かにクオーリアの言う通り競争率の高い社会構造をしている。


ところ変わっても品が違うだけで人間は変わっていないというのがわかる。

所々に使い捨ての魔道具が転がっており見つからぬよう拾いポケットにしまいながらそそくさと建物の影に隠れ拾った魔道具を調べる。魔石を用いた魔道具であり用途は不明だが使い捨てライターのようなものだと推察できる。

魔石を中心に管や見たことのない金属で構築された塊。今は機能を果たしていない。


「…キャロードクオーツに近いな。いわゆる魔石ってやつか?これを触媒か燃料にしてるってとこか。構造は電気製品に近い。経路パスを経由しているから分かりやすいな。・・・むっふっふ」


そう呟きながら俺は満面の笑みをこぼし早速魔道具を分解し

再構築。構造が簡易なので40秒で組み立て終わった


魔道具をガントレット型に組み換え腕力を上げるパワードスーツの一部に変える

金属製品だったので構造分析が実に分かりやすかった。た


だがこれだけじゃ使い物にならない。殴るとき反動に耐える緩和剤の骨子部分がなく原動力たるエネルギー自体がない。元がガントレットを想定したものではないので当然か。


そしてこの魔石自体粗悪品なのでこれ単体では太陽光を電気変換するレベルに至っていない。クオーツ二、三個は欲しいところだ。本来なら純度の高いものに変換すればいいが機材が足りない。俺一人では限界がある。

何か他にないものか…。流石に落ちている魔道具をこれ以上拾うのはマズいと思い衆目の目を引かぬようそのまま俺はギルドへ向かった。


立て看板にメージと書いてあるので間違いない。しかしなぜ俺は文字も読めるのだろう。カーゴ循環だけでは説明つかないぞ

まあそれはおいおい考えるとしてギルドののれんをくぐり入り口を通過する

やはり街中同様人がごった返しており受付まで列が並んでいる。ひょっこりとがたいの良い人の後ろへ並び待っている。そして数時間が経ち……


「お待たせしました…って大丈夫ですか!?」

「おおおおおおおぉぉ仕事お疲れ様でず………」


俺は満身創痍だった。もやしの俺が二時間の列に耐えられるわけもなく意志の力だけで立ち上がっていた。律儀に立って待っているもんだから足腰が持たない…

腕のガントレットが重いし…護身用で作ったんだがな…

だが後ろに待っている人を待たせるわけにもいかないので手早く行動する


「魔道具処理の依頼を受けたいのですが…」

「はい、特殊な繊維服を着衣して行う清掃作業ですね。受領まで空いた席へお待ちください」

「わかりました」


と言っても開いている席などひとつもない。地面に座るのもいいが良い場所もない。通路の邪魔になるので疲れたまま気力で立って頑張る


やばいな…これ仕事どころじゃないぞ…。とりあえず水分補給するか。

これから数分は待つであろう間は水分補給で回復を図る。


水をあおった後ため息を吐きガントレットでも眺めておく

試作機一号はキャロードクオーツに近い物質の為レーザーの要領でエネルギー生産が可能と判断した。今の段階では難しいが廃棄場にはたくさんの魔道具があるはずだ。


ルビーに光を当てて発せられる反転分布によって電気を造り出す要領で太陽光を充てて電気を発生させる励起現象。それを利用しガントレットのエネルギー源とする。

これを魔石同士連動させ完成させる。

今できるのは廃棄された魔道具から素材を大量に確保し良質なものを集めて研究材料と売る為の物品と俺の装備として活用するのが目的にした。


しかし…色々もったいないなとため息を吐く。

粗悪品とはいえまだまだ利用価値は十分にある。

それを使えないという理由で廃棄はもったいなすぎる。

用途はまだまだあるのに生産という形に重きを置きすぎて発展への道を閉ざしている。

という社会構造を垣間見た気がする。もったいない…!全然君は使える子なのにとガントレット君をなでる。君の良さを社会は理解していない!!


「変わってる…」

「よく言われるってうおっ!?」

いつの間にか至近距離に魔法使いっぽいコスプレをした少女が立っていた

いや、魔法使いか。よく知らないけど。全く面識のない子が話しかけてきてビビった

そしてその後じーっと俺の持っているガントレットをその子は黙って眺めている。

じー・・・

じー・・・

じー・・・

「じー…」

「口に出てますけど…」


どうやら俺のガントレットに興味があるようだ。といっても落ちていた魔道具を組み合わせてガントレット型にしただけでまだ使えないのだが…


「初めて見たそんな魔道具」

「そうかな?普通だと思うけど」

「ヘン」

「おかしくはない。この子は出来る子」

「ヘンなのは貴方のほう…。まだまだこの子未完成」

「わかるのか…?」


そう、まだこのガントレットは形だけで大部分は素材が足りていないのだ。

廃棄された魔道具を新たに組み合わせて完成させる予定だったので

それをすぐに見破れるような構造にはしていなかったから驚いた。

完成しているのは外面だけだ。


「まあね。でも何でこんな形をしているのかわからない

何に使うかがわからない」

「何って…エネルギーを起こして筋力を上げるだけだけど?」

「・・・?ビルド魔法用の魔道具?」

「いや、物理的に。魔法じゃない」

「そう…。・・・・・・・・・」


そう言ってまたじいっと俺のガントレットを眺める。やらないぞ

そしてその間に受領が終わったようで受付嬢に呼ばれる


「ヨーヘイ様。依頼受領が完了しました。ヨーヘイ様は初めてこのギルドへの依頼を受けるので説明会を聴いてから廃棄所へお向かい下さい」

「はい、わかりました。じゃ、俺は行くから」

「うん、じゃーね。ヨーヘイ」

「くっ!名前覚えられた!??」


そう言って名も知らぬ少女と別れ説明を聞いて廃棄作業場へ向かった

仕事前から息も絶え絶え・・・控えめに言って死ぬがとりあえず生きるために頑張る



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る