第3話 魔法は科学で証明できるか?
魔法。それは未知のファクター。人類が絵空事と科学文明に於いてフィクションの産物と思われていた事象が今目の前に俺は観測できる状況に立ち会っている。
これからクオーリアが小規模の初歩魔法をあばら屋で見せてくれるという
千載一遇の行幸が巡り巡って星の巡りどころか天文学的確率にいるのだ。
「あのさ…別に大したものじゃないからそんなに目を輝かせないでよ…
この先嫌というほど見ると思うしさ…」
「何を言ってんだ!別次元において俺が最初の魔法遭遇者になって
それによって起こるバタフライエフェクトを観測する義務があるんだよ!!」
「よくわかんないけど後者がメインってことは分かったわ!!」
そう、いかなるものであろうと魔法は魔法。
そしてもしかすると俺が初の別次元への移行者の可能性もある。
それはそれで名誉ではあるが魔法を知らない俺がそれを見て感じたことによる
新たな着想。魔法を化学式に変換するコト。
別の世界の人間が魔法を知ることでの人体への変化。
元の世界に帰った時手土産としてひとつあまさず調べつくす
目が飛び出すほど凝視する。ひとつも見逃す要素もない
瞬きなど絶対するものか
そんな様子を見てクオーリアは
「…ヘンタイの目をしているわよ。キモ…」
「センシティブ的変態ではなく科学的知見に基づく変態だから
法律に抵触しない!!!」
「そ、そう…」
明らかにドン引きされたがどうでもいい。
最初の一歩は肝心で踏み外すことはできない。初歩の初歩を怠らない
それが科学であり化学。無駄なことは一切ない。
数字のように完璧でいかなる事象も式として確立できる全能性を帯びているのだから
科学に不可能はない
先ほど科学的知見と言ったが魔法を化学式にあてはめる行為はこの世界の法律に触れないだろうか?魔法は知的財産にあたるなら盗用に値する。
その行為が許されるかの有無は後で聞いてみるか。今は好奇心が抑えきれない
「じゃあ行くわよ。・・・何で初歩魔法見せるのにこんなに緊張しなきゃいけないのかしら…?」
「はーやーく!!!」
「急かすな!失敗したらどうすんの!!」
失敗したら失敗したケースを公式化するので問題なし!
なぜ失敗したかという証明も大切だからだ!
コホンッ。と咳ばらいをし祝詞めいた呪言を奏上し
その際に発光現象。熱を感じないので冷光の類かもしれない謎発光を伴って
「水の精霊よ。我が呼びかけに応えその聖名の許、御姿を現せ
アクアボール」
そしてあばら家を考慮した実害のない水の魔法。
丸い水の球を手の上に出現させた
魔法を放つさいチェレンコフ光めいたものを発していたが魔法が一般的ならば実害はない。だがそれは魔法が一般普及したこの世界による耐性持ちの可能性があり
魔法のない世界の俺に及ぼす影響を鑑みガイガーカウンターを作ることを考えておかねばならない。
初期魔法であることが幸いした。
上級魔法なら致死量レベルの放射性物質を浴びた可能性がある。
というか本当に大丈夫かな?実は俺以外にもこの世界に転移した人がいて魔法使用によって死亡した例があるのかもしれない。X線レベルの被ばく量と楽観していたのは下策だ。俺はこの魔法が最初で最後に目にするものかもしれない。放射能を中和する物質R-32がこの世界にあるか分からないが最悪は想定しておこう
「どう…?何かわかった?」
「遺書を書いておかねばな…生きているうちに」
「急にどうした!??」
だがチェレンコフ光レベルならすでに死んでいるし
それに耐えうる人間は別時空であろうともありえない
なのでさっきの光の現象は核が使用された可能性は皆無だろう
初めてみる魔法。興味深い。魔力が使われるのがフィクションの相場だがそもそも魔力とはいかなる元素記号に位置するのかも知らねばならない
早く方程式にしたいなとうずうずしてしまう。詠唱というやつだろうか
あれの必要性も知らねばならない
「ねえ、何か魔法を見てなかった気がするけど気のせい?」
「いいや隅から隅、全部見てたから安心してくれ!」
「やっぱキモイ!??」
「うーん…。それにしても超能力は見たことあるんだけど
魔法は原理がさっぱりだな…やっぱ魔力とか使ってるの?」
「まあそうね。そこは共通しているみたい。
ていうか超能力って…もしかしてスキルの事?」
「才能という観点で言えば違う。先天性の超能力と後天的超能力はジャンルが違う
X因子によるブローダル作用によって引き起こす事象がそのスキルで
後から身につける超能力は薬物による
「何言ってるかさっぱりだけどつまり前者がスキルで後者は別の方法で身に付けられるけど原理そのものが違うって意味ね…?」
「かいつまんでいうとそうだな。
才能ありきで抽象的だけど神によってもたらされたのがスキルという定義ならそう言える。この世界のスキルがどの立ち位置にいるかはわからないけど」
「多分あってる。ギフトによってもたらされた天賦の才覚。それがスキルよ
でもあなたの世界にもスキルがあるのね」
「昔は眉唾物として噴飯の的だったがな。時代の転換期というかある日を境に覚醒者があらわれて現実に立証された。科学者がこぞってそれを調べて
人工的に作られたのが今の科学だ。
覚醒者の超能力はまだ未知数で人為的に作れない。
対して薬物投与による自己意識の拡張によって物質干渉を可能にしたのが一般的な超能力と定義されている」
薬物によって脳と現実の認識境界をあいまいにし
薬物と粒子を脳に投与し脳内にあるイメージを現実に具象化する技術。
普遍的無意識にアクセスしディラックの海をソースとして組み上げ、プランク定数という
それがいわゆる後天性。養殖の超能力とされている。
この世界に定義されるスキルは多分だが後付けで転与されるタイプではないようだ
X因子の謎。ここでもしかして調べられるかもしれない。
X因子はなぜそれが可能なのかというマクスウェルの悪魔のように証明されていないものだ。だが同じものがこの世界には存在する。
そう仮定すれば
この世界をルーツとし時空を超えて伝播したのが超能力と定義もできなくはない。調べる課題が増えた。嬉しい。
「で、この魔法だけど貴方の言うかがくで再現できそう?」
「うーん…まだ仮説の域を出てないから無理だなぁ」
「だよね。ならこれから色んな魔法を見て見聞を広めるしかないわね」
「…あの、何でそんなに協力的なの?見ず知らずの俺に対して」
「え?」
なんというかこれから一緒に旅に出る仲間的な発音に聞こえたので
間違いならば訂正してほしい。
会って話して数時間も経っていない。流石の俺もそんな奴を信用できない。まあもともと誰も信用してないけど
「そりゃ…私もあなたと同じ
洋平のかがくとやらで逆の私の魔法をパワーアップできる可能性だってあるじゃない
逆もまた然りよ」
なるほど。打算的なら信用できる。互いの利害ほど信頼できるものはない
両者ともども利用し合う仲。フフ…中学の頃のライバル。
光宮ユウト君との切磋琢磨を思い出すぜ…
「良いね。じゃあ俺もクオーリアを利用させてもらうぜ
新たな科学の発展のためにな!」
「ええ!私も新たな魔法の可能性を広げるために
洋平を利用させてもらうわ!」
そう言って俺たちは熱い握手を交わした。
思えば、彼女に会ったことがなによりも天文学確率だったのかもしれない
酸素が黄金になるようなありえない確率。科学も魔法も超越した奇跡と呼ばれる類がこの出会いだったのかもしれないのだ。
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