第31話 雪乃さんとの同居
「それで貴方が妖王に狙われていたせいで、そこのメイドが腕を失って仕事も失ったから、晴明君が雇うことになったと……」
俺は正座しながら義江さんに説明していた。なぜ自分の部屋で正座をしなければならないのか分からないが、部屋に着いて直ぐに俺は正座していた。これが本能ってやつなんだろうな。
「はい……その通りです」
更に俺は敬語にもなっていた。これも本能って(ry
「どうして敬語なのかは聞かないでおくわ。やましい事がないのなら言ってくれればいいじゃない。それとも私は信用に値する人間じゃないと思っているのかしら?」
「そんなことないですよ。ただ文句言われるだろうなと思い黙っていました。すいません」
謝る必要があるのか分からないが、謝罪が自然に口に出ていた。これが本(ry
「本当かしら?貴方が嘘をついたら私分かるのよ」
義江さんの方を見てみたら
「す、すいません。本当は普通に忘れてました」
「やっぱりそんなことだと思っていたわ」
彼女はこちらを一度見てから溜息をついてそう口にした。
どんなカラクリがあるか分からないが、本当に嘘を見抜けるんだろうな。彼女がこっちを見た際にその目は俺の心の中を見抜くような瞳をしていたので事実のはずだ。……まあ俺が顔に出やすいって可能性もあるけど、多分大丈夫だと思いたい。
ポーカーフェイスは苦手だけど。
「まあいいわ。晴明くんが彼女を雇うことになった話はこれで終わりにしましよう」
「じゃあもう暗いから送って帰るよ」
俺は義江さんに早く帰って欲しかった。もう外は暗く他の生徒に見られたら勘繰られるのは確実だろう。女子生徒にはもうバレているだろうから仕方ないが、問題は男子生徒だ。
他の男子生徒に俺が雪乃さんが部屋に居ながら、義江さんを部屋に連れ込んでいるのがバレたら何されるか知れたものじゃない。
「まだ同棲している理由は聞いてないわよ」
「同棲じゃなくて同居だよ。それに急なことで部屋が無かっただけで直ぐに引っ越すんだよね。そうだよね雪乃さん?」
「ん?私はこのままこの部屋で過ごすつもりだぞ」
何言ってくれてんだこの人は。
家政婦として雇うのはこの際一旦置いておいて、何故一緒に暮らすんだ?普通家政婦を雇ったとしても夜には買えるものじゃないのか?
もし同じ家で住むとしても大金持ちで部屋が複数個ある家の人だけじゃないのか?
これは俺が間違っているのか?
「そうなのね」
義江さんは俯いてしまった。
そんなに怒ることか!?確かに学生の身分で年上の女性と狭い部屋で同居するのは不健全なことかもしれないが、教師や校長に言われるのなら分かるが、義江さんに怒られることではなくないか?
「……今日のところはこれくらいにしておくわ。学校でまた聞くから」
「あの学校では止めて欲しいんだけど」
「なにか文句でもあるのかしら?」
「ないです……」
これが(ry
義江さんを女子寮まで送って来たが、何とか他の男子生徒とは会わずに済んだ。
この時間帯に出歩いているのは不良か急に必要なものが出来た奴だけだろうな。そう考えると俺は不良なのかもしれないな。
義江さんと一緒にいる時に雪乃さんと出くわした時はどうなる事かと思ったが、何とかなったな。ただ明日は厳しい一日になりそうだ。まあ明日のことは明日の俺が考えてくれるだろう。
はぁ、この考え方は後々になって後悔するんだろうな。
昨日の予想通り、朝起きた俺は慌てていた。義江さんに出来る言い訳を考えていないのもそうだが、一番問題なのは他のクラスメイトが居る中で問いただされることだ。説明だけならその場で何とかなるだろうが、他の人が居る状態で聞かれたら誤魔化しが効かなくなるからな。
「早く朝飯を食わないと遅刻するぞ」
「分かった」
雪乃さんが居ることでズル休みをすることは不可能だろうしな。
「あの子から私がここに住んでる理由を聞かれるんだろ?追い出したいなら追い出してもいいぞ。まあ追い出されたら私はホームレスになるがな」
「そんなこと言われたら、追い出せるわけないだろ。そもそも追い出すつもりなんかなかったしな。まあ説明は大丈夫だろ……問題は他の生徒たちに聞かれる可能性が大いにある事だ」
「そこは諦めろ。どっちにしろ私が買い物とかしているんだからいつかはバレるぞ」
「そうだよな……仕方ないが出てって」
「もう言質取ったから無理だ」
雪乃さんは食い気味で言ってきやがった。
「ですよね。はぁ、これからどうしようかな」
支度等を終えた俺は重い足取りで校舎へと向かった。
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