第22話 職場体験
「体育祭から1ヶ月が経ったが、諸君もかなり陰陽師としての技術が身についただろう。だからその実力を確かめられる場所を用意した。それは職場体験。またの名を学生のタダ働きだ!」
うん。あまりにも宜しくない表現は教育委員会に何か言われそうだからやめて欲しいな。
でもその会社からしたら品行方正な生徒が来た場合はいいだろうけど、ヤンキーとまでは行かずとも不真面目な生徒が来たら不利益の方が大きいだろうな。
「まあ職場体験と言っても君らが行くのは十二天将のところだけなんだけどな」
随分と豪華な職場体験だな。校長や久我先生も入れても十二人しか居ないわけで、この学校の生徒全員が行くとしたら、かなりの大人数になるよな。その辺はどうするつもりなんだろう?
「君らの疑問はよーく分かる。我々は十二人しか居ない。私たちがいくら強くとも十数人の足でまといを抱えれば万が一があるかもしれないから、職場体験はAとBクラスそしてCDEの成績トップ者に限定させてもらった。まあそれでも七人くらいは見なければならないから行くか行かないかは自由だ」
陰陽師としては十二天将の仕事を見れるのは大きな成長に繋がるチャンスのはずだが、行かないやつも居るだろうな。
ただ考えて見てほしい。俺らが陰陽師になるのは既定路線だ。そして陰陽師として現場に出るのと十二天将の元で成長してから現場に出るのとでは、確実に前者の方が危険度が高いはずだ。だからここで行かないやつはリスクヘッジの仕方を間違えているな。まあこれは現場に出たことの無いペーペーの発言だから間違っている可能性もあるが、成長は出来る時にしたほうがいいのは間違いないだろう。
「君らには選んでもらうことがある。それはどの十二天将について行くかだ。十二天将は1人で7人を見ることになるから、うちのクラスから出せるのは最高4人までだ。まあ今日は取り敢えず希望を出してもらって、結果は後日報告する形になる」
「せんせー、十二天将がどんな人か醍醐校長と久我先生しか分からないんですけどー」
「そうだったな。では簡単に説明していくか。まずは私だが、十二天将の朱雀の力を受け継いでいる。得意な術は【転移】だな。次は久我さんだが十二天将の中でもベテランで経験豊富だ。そして久我さんはもう還暦で教われるチャンスは1番少ないだろうな。そして次は――」
醍醐校長は十二天将を一人一人軽く説明していた。
一癖も二癖もあるような人ばかりであったが、みな教われそうなことはあったから悩むな……やっぱり俺が教わった方がいいのは久我先生だな。俺に足りていないのは術の精度や体力もそんなんだが、1番は経験だ。十二天将の中でもトップクラスに経験が豊富である久我先生の活躍を近くで見れば何か掴めるかも知らないからな。
「義江さんは誰がいいとかある?ちなみに俺は久我先生だよ」
「私は……
「まあそうだよね。ただその人は陰陽師らしくないらしいってのが怖いよね」
「きっとなるようになるわ」
義江さんは良い風に変わったから良かったな。でもあのツンツンとした頃の義江さんをもう見れなくなると思うと残念な気持ちもあるかな?
「倉橋くん、何か変なことを考えてないかしら?」
「な、なにも考えてないよ!」
「怪しいわね……まあいいわ」
心を読まれたのかと思って声がひっくり返っちゃったよ。まあ心を読んだわけでは無さそうだから、きっと勘で聞いてきたんだろうな。
「倉橋くんはどうして久我先生にしたいの?」
「俺に足りてないのは経験だと思ってるから、それを1番持っている久我先生かなって」
「私の理由より理にかなってるわね」
「まあこれで決定するわけじゃないから、あまり気にしない方がいいよ」
「それもそうね」
そして職場体験先決めから数日が経ち発表の時が来た。
「――次は久我さんのところだが、うちのクラスからは倉橋、山田、賀茂の三人だ」
山田と賀茂さんか。山田とはある程度交流があるが、賀茂さんとはほぼ初めての絡みだな。この賀茂さんだが、あの土御門家と対をなす陰陽道宗家の賀茂家の人間だ。
そもそも陰陽道宗家とは陰陽師黎明期の時代を支えた二つの家、土御門家と賀茂家のことを言い、この二つの家だけはほかの名家とは格が違うとされている。その理由はいくつかあるが、一番の理由は一家相伝の強力な術があることだろう。
土御門家は妖に対して特攻とも言える属性である光属性の術、賀茂家は妖に近いが故に妖の攻撃の大半を無効化できる闇属性の術、この術があるからこそ二つの家は陰陽道宗家としての地位を保っていられると言える。
「よろしく賀茂さん、山田」
「よろしく!倉橋と賀茂さん」
「よろしくお願いします。倉橋くん、山田くん」
賀茂さんはだいぶおどおどしてるけど陰陽師として大丈夫なのかな?
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