第17話 障害物競走

 負けたのは仕方ないから切り替えないとな。勝てると思っていたのになぁ……。


「次の種目は障害物競走だ!!スタートは今だ!」


 急すぎないか?まあ校長がその場その場の人なのは知っているから動けたけど……動けたのは多方うちのクラスだな。他のクラスは一部勘のいい人だけが動けている状況だな。


「第一の障害物は、我々教師陣が用意した式神たちだ!ちなみに直接危害を加えてくることが無い代わりに君らも直接式神を攻撃したら失格になるから気をつけろ」


 障害物競走の第一の障害物は教師陣の式神だ。授業で使っていた式神よりも1段階強い式神が布陣しており、生徒の進路を邪魔するような形で動いている。


 木の根を地面から生やして生徒を絡めとる式神や水の檻を作り出して生徒を捕らえる式神、金属で本物の檻を作り出す式神と色々な種類の式神がいる。

 Cクラス以下の生徒たちは基本的に捕らえられて進めていなかった。ただクラストップの人達はどのクラスも簡単に乗り越えていた。


 ちなみに俺も木刀だけで乗り越えた。うちのクラスはほぼ全員式神ゾーンは抜けられた。数名は他の生徒に巻き込まれる形で式神に捕まっていた。

 1位通過したのは、多分Bクラストップの小佐々だろう。俺の数歩前を近衛や義江さんCクラスのトップだったりが走っていたが、その中には小佐々は居ない。勿論後ろにも居ないため、先頭を独走しているのだろう。


「次の障害物は燃え盛る地面を走り抜けろ!ちなみに炎は火傷はしないが、かなり熱いから気を付けろよ」


 俺には大分不利なステージだな。術を使って乗り越えるか……ただこの炎が実際の炎と同じ作用を持っているのだとしたら、俺の術では乗り越えるのは不可能に近いな。

 なら他の人の術を利用するか?いや、順位を競っているんだ、きっと妨害してくるな。


「【水砲】」


 あれは義江さんの術か。あれなら利用出来るな。


 義江さんは砲弾のようなサイズの水の塊を燃え盛る地面へと放った。水の勢いと地面が湿ったことで炎は数瞬の時だけ消えていた。そこを優雅に義江さんは走っていた。

 その道を俺は息を潜めながら走った。ちなみに息を潜めなくても義江さんは邪魔をしなかっただろうが、これは悪知恵を働かせた時の様式美だ。


 この道は第一の障害物に比べて時間を掛ければ誰でも突破出来るような仕掛けなので脱落する人は居なかったが、トップとの差はかなり開いているため後ろの人がトップに入り込むのはかなり難しいだろう。


「最後の障害物は……この私の攻撃から逃げ切ってこのゴールを越えろ!!」


 校長の実力は空亡との戦いで見たので、ある程度分かっているつもりだが、本気を出されたら手も足も出ない相手だ。そのことはきっと校長も分かっているだろうから、手加減はするんだろうな。それに校長の攻撃は凶悪だから普通に攻撃を喰らったら死ぬだろうな。


「私の邪魔は面倒くさいぞ【転送】」


 先頭を独走していたはずの小佐々が俺たちトップ層のところに紛れていた。そのことから導き出されるのは、校長の邪魔は転送の術で戻すことだ。


 あの邪魔を超えるには二つ手段があると俺は考えている。まず1つ目は普通に実力で正面突破すること。これは俺らと十二天将である校長の実力差を考えると不可能だろう。そして本命は2つ目の人の陰に隠れて術を使った瞬間に走り抜けることだ。


 校長の術には特徴がある。校長の術は彼女に触れている物は無制限に転移させることが出来るが、自分から離れた物を転送するのは1箇所が限界だ。そして一度発動すると次発動するまでに一瞬のタイムラグがある。そこを突くことさえ出来れば突破することが可能かもしれない。

 ここで失敗したとしても後ろに戻されるだけだから何度も挑戦すればいいだろう。


 そして今の俺は近衛の数歩後ろを走っている。近衛は前しか見ていないのか、俺の事など気付いていない。こういう時に猪武者である近衛は助かる。


「そんな真正面に来ても私は越えられないぞ!【転送】」


 術を発動した!今だ!!


 俺は前を走る近衛を抜かすように全力疾走した。そんな俺を見る校長の瞳は驚きと認めるような感じに見えた。

 そして校長の術は発動し、近衛は先程までいた場所に戻されていた。冷静に校長は2度目の転送を行おうとしたが、俺がゴールテープを切るのが1歩速かった。


「優勝者はAクラス倉橋晴明だ!!ちなみに順位を付けるからゴール出来るものはした方が良いぞ!」


 俺がゴールしたことを校長が宣言したことで、Aクラスは盛り上がり、他のクラスは項垂れていたが、順位が着くと聞いた瞬間、Aクラスや他のクラス関係なくゴールへと一目散に走り出した。1位でゴールした俺の事など忘れたかのように……。


 寂しくなんかないんだからね!


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