第15話 『押し合い』一回戦
俺の相手はCクラスの2番手みたいだな。Cクラスと言えど現在の数値で言えばトントンもしくは負けている可能性が大いにあるから、油断は出来ないな。
「よろしく頼むよ倉橋くん」
「よろしく鈴木くん」
鈴木くんと握手をしたのだが、鈴木くんはその爽やかな感じの見た目と相反して性格が悪いみたいだな。俺の手を折ろうとしているのかってくらい思いっきり握りしめてきやがった。
ただその勝負を長年剣道をやってきた俺にやったのは失敗だな。
俺も骨が折れ無い程度の力で握りしめてやった。そしたら鈴木くんは顔を真っ赤にして手を振り回して俺の手を外そうとしていた。
爽やかな顔が苦しんでいるのを見るのはグッとくるものがあるが、これ以上は可哀想なので話してやった。
そしたら鈴木くんは自分の手を一度見てからこちらを睨みつけてきた。
「よろしくね」
嫌味ったらしく言ってやった。
「試合前からバチバチだな。だが男と男の戦いって感じがしていいな!!Aクラス倉橋対Cクラス鈴木試合開始だ!」
俺は一気に流せるだけの霊力を流し込んだ。それでも押し切ることは出来なかった。
相手も俺と同じ考え方をしていたんだろうな。初手で一気に片付けようとしたなら、霊力の最大値は最初だ。あとは俺も相手も下がり続ける。だからどれだけ現状を維持出来るかが大切だな。
「もう限界じゃないのか?俺はまだまだ余裕だから諦めた方がいいと思うよ」
「……何を言っているのか分からないね。君がどうか知らないけど僕は余裕だよ」
俺は霊力の維持で勝てるかが分からないので舌戦を仕掛けた。向こうも余裕そうにこちらを煽ってきたが、少し声が震えているような気がした。鈴木くんは限界なんだろうな。
俺はその後も出来るだけ現状維持に徹して、相手の集中力を途切れさせるために時々舌戦を仕掛けた。
そして限界を迎えたのは相手の方だった。鈴木くんは霊力の限界を迎えたのか、一気に注いでいた霊力が消え失せ、メーターが一気にあちら側に倒れたので俺の勝利が決定した。
「余裕だったよ」
「くっ!」
鈴木くんは歯を食いしばってこちらを睨んでいる。でも先に仕掛けたのはそっちなんだから、逆恨みは辞めて欲しいよ。
「次の試合はAクラス近衛対Bクラス小佐々試合開始だ!」
佐々木とはBクラスのリーダーであり、Bクラスの1番手である彼は団体戦では声をはりあげていた熱血男だ。
そんな彼は希少属性の持ち主だ。水属性に近い属性である氷属性の持ち主であり、九州の名家小佐々氏の次期当主候補だ。
その霊力量は学年1と噂が立っているのだが、本当なのか?もし本当だったとしたら、近衛は負けるだろうな。
「フェアな戦いをしようぜ!!」
「汚い手を使うまでもない」
小佐々は生真面目な体育会系男子って感じで近衛は真面目だが、クールって感じになるな。まあ近衛は真面目だと思わないけどな。
最初の競り合いは残念なことに若干近衛が押しているみたいだ。
ただ小佐々は焦る様な仕草を見せないので何か待っているんだろうな。それに対して近衛は気にする様子を見せることなく全力で霊力を込め続けていた。まあ近衛は霊力だけは馬鹿ほどあるから、あれだけやっても切れることは無いんだろうな。
「なかなかやるじゃないか近衛!俺もやり返してやろう!!」
その言葉とともに彼が込める霊力が倍近く増えた。ジリジリと近衛が押していた展開が打って変わってかなりの速度で近衛が押されていた。このまま行けば数十秒で負けるだろう。
近衛は負けないために込める霊力を無理して増やしていた。無理に増やしたことで一気に押し返していたが、今まで温存していた小佐々に対して近衛は止めどなく流していたから、そろそろ限界が来るだろうな。
やはり近衛が先に限界を迎えた。一気に出力が下がった近衛の霊力を飲み込むかのように一気に小佐々が霊力を前回で込めると、メーターが一気に振り切れた。
「勝者小佐々!!」
よし!近衛は一回戦で負けた。次の試合で負けたとして近衛には勝っているから別にいいな。まあやるからには全力でやるが、次は義江さんなんだよな……。
「一回戦の勝者は全員で揃った!!二回戦を開始する!第一試合はAクラス倉橋対同じくAクラス今川だ!試合開始だ!!」
「私は全力で倉橋くんを倒すわよ」
「霊力の師匠でもある義江さんを超えてこそ成長したと言えるから、俺が勝たせてもらう」
俺は綱を握り霊力を流した。
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