第12話 筋肉の成長
放課後訓練の二時間が終わった。
俺に敗北した近衛は他の男を片っ端に倒してストレス発散していた。巻き込まれた奴には同情するが、特に謝りたいとかは思っていない。この学校は実力主義で負けた奴が悪いからな。
剣道やっていた頃は負けた奴が悪いなんか思っていなかったんだが、俺もかなり陰陽師に染まっているみたいだ。まあ目の前で教員が殺されるのを見てそのままの性格を保っていられる奴なんか居ないと思うがな。
「義江さん大丈夫だった?」
「これを……はぁはぁ見て……はぁはぁ大丈夫だと思うのなら……はぁはぁ正気を疑うわね」
俺らより1周多く走った義江さんはかなり息が上がっていた。まあ10周時点できつそうにしていたから、さらに1周多く走るのはしんどいを通り越して死ぬよな。
「……貴方は楽そうね」
「まあ中学の時は剣道をやっていたから、普通の男子学生よりかはあると思ってるからな」
「そうなのね……私もなにかやっておけば良かったわ」
「でもその分霊力は強いじゃないか」
「そうなのだけれど……体力は重要だったのよね。私の家は身体能力を鍛えるのは二流って言われているから、鍛えさせて貰えなかったの」
やっぱり名家ってのは家の教えが大事なんだな。俺はごく普通の一般家庭生まれだから家の教えってのに無縁だったから、あまり分からないけどそんなに家の教えってのは重要なのか?自分は自分じゃ駄目なのか?
俺だったら無理だな。人に強制されるのなんて高専に来させられた一度で十分だ。
「これから鍛えればいいと思うよ。俺も体力はそこまで鍛えなくて良かったとしても霊力は鍛えないといけないから、一緒に頑張ろうぜ」
「そうね」
その後俺たちは軽いストレッチをやって各々の寮へと帰った。
寮に戻ってきた俺は、寮にある大浴場で汗を流してからベッドに身を預けた。かなり疲労が溜まっていたみたいで目を瞑ると直ぐに意識は途切れた。
翌朝、俺の体は全身筋肉痛になっていた。
普通の生活で動く分にはそこまで弊害はないが、運動するとなるとかなりきついな。
軽くストレッチをしてから学舎へと向かったのだが、Aクラスの大半が体が重そうであった。
まあ普段から激しい運動をしていないとグラウンド10周はきついよな。多少の運動をしていた俺でも筋肉痛になっているんだ、義江さんの筋肉痛はやばそうだな。
俺の予想は当たり、教室に入ってきた義江さんはロボットみたくカクカクと動いていた。
「やっぱり筋肉痛になったみたいだね」
「倉橋くんは大丈夫そうね」
「軽い運動を続けて来たから、ちょっとの筋肉痛で済んだんだよ」
「私は動くのが精一杯よ」
「今日も同じことをやるって言われたら死んじゃうね」
「フラグを立てるのは辞めて」
俺が立ててしまったフラグは回収された。
「今日もまず10周走れ、そして最下位も同じくプラス1周だ」
うん。みんな昨日に比べたらだいぶ遅いな。まあ義江さんは他の人に比べて圧倒的に遅くなっているから最下位を免れることはなさそうだけど。
まあ予想通り義江さんは最下位だった。俺も中途半端な順位に終わった。ちなみに一位は昨日に続き近衛が取っていた。
一位になった近衛はこちらを見てきたが、俺は無視をしたのでイラつきを募らせているように見えた。ああいう面倒くさそうな奴は関わらないのが一番なのだが、同じクラスなので難しいだろうな。
自分からどうかすることはないが、降りかかる火の粉はきちんと払ってやる。
「今日は醍醐のポチと戦ってもらうぞ。今回は妖との連戦を想定している。妖は陰陽師の体力が戻るのを待ってはくれないからな」
今の俺らならポチを簡単に倒せるはずだが、かなり苦戦をしている生徒が多く半数が敗北していた。
俺か?俺はギリギリだったが勝てたぞ。あと勝ったのは遠距離をメインで戦っている生徒が多かったな。ちなみに近衛は俺に対抗してか、近接で戦って勝っていたぞ。まあどうでもいいがな。
「相変わらず……貴方は近接戦が強いわね」
上がった息がだいぶ戻った義江さんが話しかけてきた。
義江さんは豊富な霊力を駆使してポチとの距離を取ってギリギリ勝っていた。あと少しでも倒すのが遅れたら近付かれて負けていたな。
「俺は霊力での感覚は鈍いが、近接戦闘に置ける勘は培ってきたからな」
「ねえ、提案なんだけれど……」
「なんだ?」
「休みの日に私は霊力について貴方に教えるから、貴方は私に剣術を教えてくれないかしら?」
別に教えてもらわなくても教えるのだが、彼女からしたら貸し借りはしたくないんだろうな。
「分かった。次の休みから始めようか」
「つ、次の休みは待ってくれないかしら。来週になれば筋肉痛は治ると思うから」
そう言えば義江さんの筋肉痛は酷かったな。
「じゃあ来週からよろしくな」
「ええ、よろしくね」
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