第6話 ショッピングモール

 学校が始まってから一週間と少しが経ったが、なかなか霊力の密度を上げられないんだよな……まあ周りの人も出来てないから気にするは必要ないんだろうけど、木属性の一番にはなりたいよな。


 聞くしかないか……おっ!あいつならきっと出来てるはずだ。


「なあ今川さん、今いいかな?」


「貴方は……さんね」


「ん?聞こえなかったけど」


「……さんよね」


「はあ、座学の授業はいつも隣なんだから名前くらい覚えていて欲しかったんだけどな」


 まあそんな予感もしていたからあんまり傷つかずに済んだけど。あんまりね。


「嘘よ。せいめいくんでしょ」


「何度間違えたら気が済むんだ?俺の名前はせいめいじゃなくてはるあきだからな!」


「あらごめんなさいね倉橋くん」


「わざと間違えたなお前」


 今川さんってこんな明るいやつだったか?


「そんなことないわよ。素で間違えたわ」


「それはそれで傷つくよ」


「それで私になにか用でも?」


「そうだった。霊力を使って木刀を作る術をやったんだけどさ」


「やっぱり術が出来なかった報告かしら?気にしなくて大丈夫よ。私も初めて簡単な術をやった時は1ヶ月くらい出来なかったもの」


「いや、木刀を作るのは一発で出来たらから大丈夫なんだけど、霊力の密度を上げるってのがイマイチ出来そうもなくて」


「一日で、それも一発なんて……」


 今川さんは俺の言葉を聞いて少し俯いていた。さっきまでの明るい彼女とは打って変わって一気に暗くなっていた。


 今川さんでも難しいのか?いやこの反応は俺が一発で木刀を作るの成功したのに驚いてるって所かな?


「……密度を上げるだったかしら?」


「元気がないなら今度でもいいけど……」


「いいえ、大丈夫だわ。私は元気だもの」


 全く元気には見えないな。街にでも連れて行った方がいいのか?


「陰陽師のことは忘れて街に行かないか?」


「でも私全然お金もってないわよ」


「大丈夫だ。お年玉貯金が少しあるからな」


 ちなみにこの高専があるこの島は学校の外に陰陽師が運営している街がある。そのためバイトもやろうと思えばできるし、買い物することだって出来る。寮制のため門限はあるが、緩いため特に気にする必要はなかった。


「じゃあ行こうぜ今川さん」


「……分かったわ」


 二人で街へと足を運んだのだが、特に予定を考えていた訳では無いので取り敢えずショッピングモールに行くことにした。


 ショッピングモールにしては小さいが、高専の学生と島にいる陰陽師しか使わないと考えるとかなり大きいな。


「やっぱり陰陽師向けの店が多いな。あれは武器屋か?」


「あれは霊具屋ね。ただの武器では妖に攻撃出来ないから、武器を作る際に霊力を混ぜ込むことで妖に攻撃出来るようになるわ」


「へぇー……って高ッ!?」


「それはそうに決まってるじゃない。そもそも霊具師なんて全然居ないんだから。まあ本阿弥家が若い芽を摘んでるってのもあるだろうけど」


「本阿弥家?」


「あら知らないのかしら?本阿弥家は室町時代から続くお家で有名なのは本阿弥光悦かしら?」


 誰だろう?聞いた事ない人だな。霊具師ってことは武器を作っていたんだろうけど、どうなんだろうな。


「知らなくても仕方無いことだわ。だって本阿弥光悦は高校日本史で習う人物だもの」


「そうだったんだ。まあ俺らは高一の時点でここに集められてるわけだから仕方ないか……ってならなんで今川さんは知ってるんだ?」


「陰陽師としての歴史は一通り学ばされましたから」


 学ばされた?やっぱりそういうお家なのか?でも俺がどうこう言えるような関係ではないからな。特に触れないのが一番良さそうだな。


「服でも見に行こうか」


「私服はあまり持っていないのだけれど……あって困るものでもないわね」


 やっぱりツンデレキャラか?いや、デレがないからツンツンキャラだな。


 服屋に連れて来たが、今川さんはだいぶ独特なセンスしてるな。


「これは!かなりいい生地かもしれないわ」


「でもかなり独特な柄をしてるからやめた方がいいと思うよ」


「でも頑丈よ?」


「私服に強度を求める必要はないと思うけど……」


「私服ってのは難しいのね」


 君が考えているほど私服は難しくないと思うんだけどね。


「まあ私服は自分が好きな柄を選べばいいと思うよ」


「……ならこれね」


 今川さんが選んだのは真っ白なワンピースだった。


 かなり彼女のイメージとはギャップがあるな。


「私がこの服を着ているところが見たいのなら一級の妖を倒して見せてね」


 そう言う彼女の姿は輝いて見えた。


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