第5話 木刀

「それぞれ担当の教員がつく、それぞれ所定の場所に移動しろ」


 俺は木属性だから……あそこか。


「全員揃ったのか?この高専で木属性の授業を担当する木田きだ太一たいちだ。よろしく頼む」


「質問いいですかー!」


「なんだ山田?」


 あの質問ばかりしていた山田って人も同じ属性なのか。だいぶ騒がしい授業になりそうだな。


 でも山田って人はだいぶ社交的なのか、質問を率先してやってるけど委員長にでもなりたいのか?そもそも高専に委員長、クラス長みたいな制度はあるのか?


 山田って下の名前はなんだったけ?まあ話すようになったら自然に分かるか。


「木属性の人が他の属性に比べて少なく感じるんですけどレアな属性だったりしますか?」


「まあレアと言えばレアだな。木属性は初心者でも使いこなせる簡単な属性だ。だから甲判定が出るほどの才能がある者には出にくいという統計が出ている。ちなみに俺は丙判定だったな。それに比べて君らは甲判定が出た才能溢れる若い苗木のようなものだ。その苗木を大樹にするのも枯らすのも君らの努力次第だ」


 いい事言う先生だな。大樹にするかぁ……まあ俺は夢がある訳じゃないから別にそこら辺に生えている木くらいになれればいいかな。


 まあ雑草程度で終わる可能性もあるけどね。


「話が長くなったな。では君らには術を覚えてもらう。術というものは自身の霊力を自身の属性に変化させ、具現化させること、そしてその際に使うのがこの霊符だ。霊符を使うことで術の発動が簡単になる。こういう風に【木刀】」


 なっ!?あの紙切れが一瞬で木刀に変わった。やっぱり陰陽師ってのはすごいな。でもわざわざ木刀を霊力で作る必要はあるのか?


 でもわざわざ先生が作るってことはなにか意味があるのか?


「ちなみにこの木刀は霊力で構成されているため妖相手にも攻撃が通用する。逆を言えば霊力を持たない攻撃では妖には一切ダメージを与えることが出来ない」


「その妖ってやっぱり強いんですか?」


「まあ人間と一緒でピンからキリまで居るな。妖王クラスになれば十二天将でも厳しい相手になるだろうし、一番最低クラスである五級の妖なら君らが霊力を操れるようになれば勝てるだろうな。まあ霊力を操るのは陰陽師になるための一番最初の壁だから、時間かかる奴は1ヶ月掛けても出来ないから気長にやればいい」


 そうなのか、なら心持ちが楽でいいな。


 でも早めに終わらせておきたいな。そうすればこれからの学校生活でハブられることはなくなるだろうし、楽になるからな。


「じゃあ取り敢えず自分の感覚でやってみろ」


 霊力を木属性に変化させてこの霊符に流し込む……そもそも属性変化ってどうやるんだ?


「すげぇ!!?」


 なんだ?向こうは確か水属性の人達だったよな。


「流石名門今川家の令嬢だな」


「今川さんは実家で判断されるのが嫌みたいですよ」


 なんで俺は注意してるんだろう。あれか、霊力を動かすのを手伝ってもらったから、それのお礼で体が勝手に動いたのか。


「そ、そうか。それは悪かったな。でも15歳であれは才能の塊だな」


 確かにすごいなあれは。水が溢れるように放出され続けている。


「せんせー属性変化ってどうやるんですか?」


「教えてなかったな。属性は自身の霊力を体の外に出す瞬間、脳みそで意識すれば変化する」


 脳みそで意識……おっ!出来たな。


「おおっ!倉橋は優秀みたいだな。次はその木刀に追加で霊力を流してみろ。その木刀は既に霊力でパンパンのはずだ。それを更に霊力の密度を上げることで威力も強度も上げることが出来る」


 更に霊力を入れるのか。


 全然体から木刀に霊力が入ってくれないし、少し入ったと思っても剣先から抜けていってしまう。この技術はかなり難しいな。


「よし!今日はこれまでだ。出来なかった者は次の授業で出来るように頑張ってくれ。成功した者も慢心せず、努力を続けてくれ。以上だ」


 ふう、かなり霊力を消費したな。結局木刀の霊力密度を上げることは出来なかったから、そこが俺の課題かな。


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