第4話 属性

 確かにロッカーに着替えが入っていたのだが、その服というのが全身タイツのようなピッタリと身体に合った物に陰陽師らしく陰陽のマークが印刷されたコートのようなものを羽織ることになった。


「よし全員揃ったな!まず諸君らにやってもらうのは自分の属性を知ってもらうことだ。この護符に霊力を流すことで自分の属性を知ることが出来る。ちなみに私は火属性だ」


 校長が懐から護符という御札のようなものを取り出して人差し指と中指で挟んだ瞬間、その護符は一気に燃え上がった。

 ちなみにその護符は燃えたはずなのに灰にはならずに消えていった。そこからこの炎は霊力由来の物だということが分かった。


「この護符は陰陽寮の生産部が大量に作っているから気にせず消費していい。属性の確認にしか使えないから今の時期にしか消費されないがな」


 配られた護符を受け取ったけど、どうやって霊力を流すのだろうか?力を込めれば流れるのだろうか……見様見真似で人差し指と中指で挟んで持ってみたが、何も変化はなかった。


「そうかそうか、君らは初心者が多かったな。霊力はここら辺に力を込めると熱いものが感じられるはずだ。それを指先まで巡らせて護符に移すような感覚で流せば出来るはずだ」


 校長はお腹の方を擦りながら話していた。やっぱり少女みたいな見た目でその仕草をやると犯罪者になったような気分になるな。


 ふぅ……これか?なにか熱いものがお腹の辺りにあるのが分かるな。でもこれを動かすって言っても全然動いてくれないんだが。


「せんせー全然動かせないです」


「初心者は動かすのが難しいか……じゃあ私が手助けしてやろう。他にも出来ない者が居れば出来るものに手伝ってもらえ」


 手伝ってもらえば簡単になるのか……全員知らない人だからな。さっき話した人でいいか。


「ねえ手伝ってくれない?」


「なぜ私が手伝わなければならないのでしょうか?」


「だって君は経験者でしょ?」


「まあそうですけど……はぁ、手伝わなければ私の評判が下がりそうですね。右手を出してください」


 俺は彼女の言うとおり右手を彼女の方へと差し出した。

 そしたら彼女は俺の右手を両手で包み込むと何か熱いものを流し込んで来た。これは霊力か?成程霊力はこうやって動かすのか。


「やり方は分かりましたか?もう大丈夫ですね」


 そう言って彼女は俺の手を離した。彼女の手、かなり冷たかったな……末端冷え性なのか?なんか俺キモイな。


「そう言えば君名前はなんて言うの?」


「隣の席の人の名前も覚えていないのかしら?私は今川いまがわ義江よしえよ」


「そんな風に言うなら今川さんは俺の名前を知ってるってことだよね」


「ええ、貴女は倉橋晴明せいめいさんでしょ?」


「知ってr……いや間違ってるな!俺の名前は晴明せいめいじゃなくて晴明はるあきだから!字面だけで覚えてるな?」


「あら、陰陽師なら晴明と書かれたらせいめいと読むのが普通では?」


 やっぱり陰陽師はそうなのか、じゃあこれから俺はせいめいと間違えられ続けるのか。


「俺は一般ピーポーだからその常識は通用しませーん」


「郷に入っては郷に従えって言葉を知らないのかしら?」


「むっ、それを言われたら何も言い返せないな。でも人の名前を間違えるのは良くないと俺は思うよ。うん」


「……貴方は私の名前を一切覚えていなかったのだからおあいこでしょ」


「おい!そこの二人。痴話喧嘩は後にして早く調べろー」


 痴話喧嘩って……周りで終わっていないのは俺らだけなのか。


「分かりましたよ」


 今川さんに教えてもらった霊力を動かす感覚で護符まで霊力を流してみたら、護符から植物が生えてきた。


「ふむ倉橋少年は木属性か……それで今川少女は?」


「私は水属性ですよ」


 そう言いながら今川さんは護符に霊力を流すと護符が湿ってクシャクシャになっていた。


「流石今川家の人間だな」


「……今実家のことは関係ありません」


 なにか実家に思うことがあるのか?

 実家にコンプレックスでも持っていそうな反応だったから、今川さんと話す時に実家の話は避けた方がいいな。


「済まないな、悪気は無かったんだ。ただこれだけ忠告しておこう。実家のしがらみというものはそう簡単に切れるものではないし、他人から見たら実家というものは良くも悪くもその人の評価に繋がるものだ」


「心に留めておきます」


「よし!次は自身の属性に合った術を教えていくぞ!」


◇あとがき◇


基本属性は古代中国の説である5つの元素、五行から取って木、水、火、土、金の5つです

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