第37話

【side:勇者パーティ?】


女神の魔法により異世界から来た彼らが出た場所は無人島で挙句なぜか勇者も居ないといういきなりの危機的な状況に陥っていた。


「くそ!勇者は居ないしここは無人島だなんてついて無さすぎるぞ!」


鎧の男は砂浜に座り込んで大声で喚いていた。

彼らは姿の見えない勇者を探すため島中を歩き回った。

島が小さいため2時間ほどでほとんどを見て回れたが、結果として勇者がいないこととここが無人島であること、ついでに言うと食料になりそうなものがないという絶望的な事実が分かっただけだった。


「まぁまぁ、戦士の旦那も落ち着きなって。愚痴っても状況は良くならないんだから、なんとかしてあそこに見える陸地まで行く方法を考えないとな魔王を倒す前に俺らが死んでしまう。」


弓を背負った男が鎧の男を宥める。

それに僧侶服をきた女が同調する。


「そうですね。狩人さんの言う通りです。ここは食料もありませんので早くなんとかしないといけませんね。魔法使いさんの魔法で海を凍らせて移動するとかはどうでしょうか?」


「僧侶、あんたなかなか無茶苦茶言うわね…でも全員を飛行魔法で飛ばすよりは可能性がありそうね。正直氷系は苦手なんだけど私の魔力量なら何とかなると思うわ。それにあそこに勇者がいるかもしれないし急ぎましょう。」


ローブ姿の女は僧侶の提案に驚いたが勇者が向こうの陸地にいるかもしれないと思うと奮起した。


「それじゃ戦士、私のこと背負ってよね。氷系は苦手だから走りながらはうまく使えないからよろしく。あとそこまで強度のある氷はできないと思うからなるべく慎重に尚且つ急いで渡ってほしいわ。」


「ったく、仕方ねぇな。まぁお前みたいなガキ一人背負って走るくらい楽勝だから任せとけって!」


魔法使いの言葉に戦士が力強く答えた。


「それじゃもしモンスターが出たときは俺と僧侶で対応するってことで。倒すよりは拘束やスタンで時間を稼ぐ方向でいこうか。」


「わかりました。私は障壁や光魔法でのスタンを狙ってみますね。一応魔物除けの結界は張っておきますけどこの世界のモンスターに効くかわかりませんので注意してください。」


狩人と僧侶はモンスターが出た時の対処方法について話し合っていた。

それぞれの話が終わるといよいよ向こうに見える陸地に向かって出発することにした。


「それじゃ行くわよ!はっ!」


戦士の背中に乗った魔法使いが杖を振ると長さ10メートル、横幅2メートルほどの氷の道ができた。


「さぁ急いで!」


魔法使いが戦士に早く走るように促すと慌てて戦士は走り出した。

そのあとを狩人と僧侶が追いかける。


海を凍らせているのでもちろん平坦な足場ではない。

波により上下する海面は氷の道を悪路にしていた。

ただでさえ氷という滑る足場に上り下りする道、懸命に一行は走り抜ける。

魔法使いは必死に海を凍らせる魔法を使い続けるが魔力がなくなってきたのか段々と道の幅が狭くなり、砕けるまでが速くなっていく。


「もう少しだ!魔法使い頑張ってくれ!」


狩人はそういって魔法使いを鼓舞するも限界は近くなっていた。

だが確かに陸地も近づきあと100メートル程となってた。


しかしそんな一向に背後から大きな波が迫っていた。


「まずい!これはさすがに想定外だろ!戦士!絶対魔法使いを離すなよ!僧侶は俺につかまれ!」


狩人は弓を構えると魔力で矢を作り陸地に見える大きな岩を目掛けてその矢を放った。放たれた矢は大きな岩に深く突き刺さると魔力がロープのように伸びて狩人はそれを手を伸ばして掴んだ。そしてそれをそのまま戦士の鎧に巻き付けると僧侶を抱きしめ魔力のロープを収縮させた。


「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」」


急激に収縮させた為、一行は一塊になって砂浜へ突き刺さった。


「いたたた…全員無事か?」


腰をさすりながら起き上がった狩人は他の三人の様子を確認する


「ちょっと!戦士あんた大丈夫!?」


「あぁ問題ねぇよ、これくらいドラゴンに空から落とされたときに比べればなんてことはない!」


「それで大丈夫なのは戦士さんか勇者様くらいだと思うのですが…」


魔法使いと僧侶の下敷きになるように戦士が横たわっていたが本人はどうやら無傷のようだ。


「とりあえず全員大丈夫そうね!」


「大きなケガがあれば私の治癒魔法で治せますがあまり治癒魔法に頼るのはよくないのでケガがないに越したことはありませんね。」


「なんとかなってよかったな!」


「いや、これは…囲まれている?全員武器を構えろ!」


なんとか陸地にたどり着いた一行は一息つこうとしたが狩人が周囲に何者かの気配を察知して武器を構えるように呼び掛けた。


全員が武器を構えると一人の男が姿を現した――――


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