第32話
【side:勇者パーティ?】
女神の魔法により勇者パーティ全員は次元を超え異世界へとやって来た。
光り輝く魔法陣から現れた一行は目を開けるとそこは夕暮れの砂浜だった。
「どうやら無事に異世界に来れたようだな。」
厚い鎧を身に纏った男は手を握ったり開いたりして自身の身体に異常が無い事を確認した。
「女神様の魔法なんだから大丈夫に決まってるでしょ。それよりここはどんなところなのかしら?」
ローブ姿の女は辺りを見渡すと一面に広がる海とその先に陸地が見えることに気付いた。
「もしかしてここは島なのかしら?」
「だとしたらまずいな、あんな先の陸地までイカダで行くとしても途中にモンスターが現れたら一溜りもないぞ。」
弓を背に担いだ男が指で輪を作り陸地との距離を測ろうとしている。
「魔法使いの飛行魔法で飛んだらいいんじゃないか?」
「私の魔力じゃ自分は飛べても全員は無理よ!」
鎧の男の提案にローブの女は無理だと否定する。
「それよりも一先ずここが本当に島なのか確認と寝床の確保、それとどんなモンスターがいるかわからないから生態の調査もしないとな。」
弓を背負った男はそう言って2人を宥めた。
「あの…勇者さまの姿が見えないのですが…」
「「「えっ?」」」
僧侶服の女の言葉に3人が驚く。
確かに移転前には5人居たはずなのに今は4人しか居ない。
それから4人は必死に島中を探したが勇者と呼ばれた男が見つかることは無かったーーー
【side:某秘密結社】
「それでまだ例の被験体については掴めていないのかしら?」
薄暗い部屋の中で複数の大型モニターを前に1人の女がそう言った。モニターには顔は映っておらず代わりにそれぞれ特徴的なマークが映っている。
「はい、候補者10名のうち9名については調べが付いたのですが、最後の1人がどうやら候補者では無い者が紛れ込んでいたようでその足取りが掴めていません。」
フラスコを模したマークのモニターから男の声でそう報告がされると、他のモニターからは響めきが起きた。
「お前たち研究部門が中途半端なことをしたせいでこのような騒ぎが起きているのだぞ!」
「そうだそうだ!」
「どうやって責任を取るつもりだ!」
他のモニターからは批判するような声が多数上がり騒がしく収集がつかなくなる。
「みなさん、お静かに。」
女がそう言うと一瞬で全員が批判や文句を言うのを止めた。
「とり急ぎその最後の1人について足取り含めて調べて下さい。そして今後についてはボスの指示通り当面は私が結社の総指揮を取ります。異論はありませんね?」
女の言葉を聞いても誰も言葉を発しない。
「ご不満なのはわかりますが、すべてはボスの指示ですので従って頂きます。もしこのままボスが見つからなければ私が次のボスを指名するように言われていますのでそのつもりで私に協力しておくのが賢いと思いますが。」
「それと最近日本の方で動きがあるみたいですね。担当はだれでしょうか?」
「そちらは私の方が担当しております。」
女の言葉に剣のようなマークのモニターから女の声がした。
「最近、異能力特別対策室の方が組織改変をしているようでかなり大掛かりに動いています。とりあえず数名潜り込むように手配してあります。」
「そうですか、いま日本には『影』や『色』が派遣されていますので貴女の采配で上手く使ってもらって構いません。」
「ありがとうございます。必ずご期待に沿える結果を出させた頂きます。」
「ボスもいつも言っていますが言葉は不要、結果で示して下さい。他の方々もしっかりとやって頂かないと、わかりますよね?」
女がそう言うと先ほどのフラスコのマークのモニターから苦痛の声が聞こえ、画面が替わるとメガネを掛けた男が床で苦痛でのたうちまわっている。
「それではまた来週の定期報告会で…」
女がそう言って会議の締めを行うと同時に苦しんでいたメガネの男の頭が床に転がっていたーーー
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