第27話

【side:魔族】


ここは異世界にある大陸の最西端、

魔族という種族の特性もあり昔から争いが絶えないこの地域はすっかり荒れ果て雑草すら生えない不毛の大地となっていた。


そんな荒野の端、海に面した崖の先に魔王城と呼ばれる城がある。

昔から魔王となったものが君臨する場所とされている。

魔王城の付近にはすべてボロボロであるが大都市と変わらないほど多く建てられている。魔族は度重なる戦いで全体数が少なくなり、今ではほとんどの魔族がここに住んでいる。


そんな魔王城で数人の魔族が頭を悩ませながら話し合っていた。


「次期魔王のヒノタマ様が異世界に渡って数日が経ったがその後戻ってくる気配がないか…」


「はい、異世界に繋いだゲートも昨日破壊され戻ってくるのはより困難かと思われます…」


「ゲートが破壊された事を考えると前魔王様の魔力の回収に失敗し何者かに敗れたと考えるのが妥当でしょう…」


「そうだな…まったく人の話を聞かずに一人で行くなどというからこういうことになるんだ…」


老けた魔族がそういうと部下の魔族が頷く。


「それではヒノタマ様は死亡したとして、次の候補は誰だ?」


「順当に行けば同じ前四天王のどなたかになるかと思います。ですがあの方々は…」


老魔族の問いに部下の一人の若い魔族が答えるが少し言い淀んでしまう。


「他の3人はあまり魔王という地位に興味がないようだからな、それにあやつらが上に立ったら魔族という種族が大きく変わってしますかもしれんしな…まったく、困ったものだ。」


老魔族がそういって項垂れていると別の若い魔族が提案をした。


「それでしたら先に異世界へ斥候役を送り込んでみたらいかがでしょうか?そして異世界の情報を集めているうちにこちらで次の候補者を考えればいいかと。」


「ふむ、その案は悪くないな。だれか適任な能力を持つものはいるか?」


「先の大戦で人間の国に密偵として潜入し無事に戻ってきた者がいますのでその者が適任かと。」


「よろしい、では至急その者に準備をさせろ。」


「「「はっ!」」」


そうして魔族達は次の作戦へ向け準備を始めた―――




【side:とある一族】


大きな屋敷の和室の一室で二人の男が向かい合い座って話をしていた。


「それであいつからの式神にはなんと?」


「はい、それがなにやら対策室絡みの件に巻き込まれているようです。その為、先日の招集にも応じれなかったと。」


「ふん、まぁそんな事はどうでもいい。わざわざ私に報告をしたということは別の重要な事があるのだろう?」


「はい、それが余程急いで書いたのか「神力の継承やったか?」とだけ後から別に送られていました。」


「ほぉ、あの場にいないあいつがそれを知っているいうことは何か神力に関係することに巻き込まれているのだろ。もしやあいつが神力を継承したのではないか?」


胡坐をかいて肘掛けに肘を乗せて尊大そうな態度でそういった少し老けた男に対して、

対面に背筋を伸ばしたきれいな正座で座っていた若い男は否定する。


「いえ、そんなはずはありません!私より劣っている愚兄が神力を継承などありえません!何より先日回収した神力を纏ったとされる小石にも愚兄の気力は感じませんでした。」


「ふっ、冗談だ。だがあいつが何か知っていると見て間違いないだろう。何とかしてあいつとの連絡をとるのだ。最悪多少強引でも構わん。」


「はっ、かしこまりました。」


若い男はそういって頭を下げると立ち上がり部屋を後にした。

その表情はどこまでも深い憎しみを浮かべていた―――




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る