第28話
魔族の襲撃から三日が経過した。
その後ぎっくり腰で動けなくなった俺と外まで飛んで行って気絶していた健は再び病院に入院させられ、
俊と悠は本部と呼ばれる場所に伏見に連れていかれて音沙汰がない。
今回の件はテレビやネットニュースでは体育館のシャワールームの温水設備が漏電した事が原因で発生した爆発事故として報道されていた。
改めて異能力や魔族の事は秘匿されているのだと実感した。
だが同時にそんなことに巻き込まれたという恐怖も感じていた。
俺は薬のお陰か入院させられた当日の夕方にはすっかり痛みがなくなっていたが、
伏見に安静にしていろと言われて強引に入院させられていた。
健も体は無傷だったが気を失っていたので頭を打った恐れがあると言われ同じく入院させられていた。
俺たちは二人部屋でスマホを弄りながらゴロゴロと時間を浪費していた。
「そういえばさ、俺のスマホ画面割れてたと思ったんだけどいつの間にか直ってたんだよなー」
「それ寝ぼけてたんじゃないの…?スマホが壊れた夢を見たとか、たまにそういうのない?」
「あーあるわ、仕事終わったと思ったら夢の中で仕事してた、とかな」
「ブラックあるあるは僕にも刺さるからやめてよ…」
「すまんな、それにしても暇だな。もう腰も痛くないしさっさと退院したいわ。いや、でも仕事行くと思うとまだいいか。」
「それは確かにそうだよね。ところでほんとに大丈夫なの…?あの火の玉素手で殴り返してたけど手は火傷とかになってない…?」
「それが手は全然大丈夫なんだよな。火傷一つないわ。もしかしたらあれが俺の異能力ってやつなんじゃいか?なんでもぶん殴れるとかさ。」
「そっか、そうかもね…手にオーラを纏うとかは漫画とかだとよくありそうな能力だよね。」
「だよなーあれからなんとなく使い方が分かった気もするしな。そう言う健はどうなんだ?全然普通に動けてるところ見るともう身体の制御は上手くいってそうだけど。」
「うん、僕もなんとなく使い方が分かったから大丈夫だよ。でも元々運動神経良くないからそれは心配だけど…この前だって怜治の前に行こうと思ったら躓いて魔族にぶつかっちゃったし…」
「まて、お前あれ俺に向かってきてたのか?!俺があれ喰らった絶対死んでたぞ!
しかもぶつかったなんて可愛い威力じゃないだろ…」
俺は衝撃の事実に背筋が凍るような感覚がした。
あの時本当は死んでたの俺だったのか…
そんなの全員トラウマ確定だろ…
「とりあえず今後はあの体当たりは禁止な、お前に人殺しになって欲しくないからな。」
「うん…でももう力はコントロール出来てるから大丈夫だと思うよ…」
俺たちがそんな話をしていると病室のドアを誰かがノックした。
「どうぞー」
俺がそういうとドアが開きそこには同じスーツ姿の伏見と辺見が立っていた。
そしてその後ろに知らないハゲたおっさんもついでに立っていた。
「お、二人ともお疲れ様っす。」
俺はおっさんを気にせず二人に挨拶をした。
健もペコリと頭を下げた。
「お二人とも元気そうでよかったです。」
「先日はーありがとうございましたー」
そう言って二人は病室の中に入ってきたがその後ろをおっさんがついてきていた。
「あれ?おじさん病室間違ってませんか?」
「なに?」
「伊藤さんこの人は私たちの上司です。」
俺の言葉におっさんは不快そうな顔をすると伏見がそういった。
「あ、そうなんですね。失礼しました。」
「ふん、臼井だ。」
「うすいな?俺は別にまだハゲてないですけど、ついでに言うと家は白髪になる家系なのでハゲないと思ってます。」
「ちがうわ!誰も髪の話をしていない!私の苗字だ!まったくあの男といい最近の若いやつらは…!」
「あ、そうなんですね。すいません。あとそういうこというと老害っていわれるんで気を付けた方がいいですよ。」
「余計なお世話だ!」
俺とハゲ、もとい臼井の会話を聞いて伏見は必死に笑いを堪え、健と辺見はクスクス笑っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます