第18話
【side:山本 健】
僕は昔から運動が苦手で体を動かすより本を読むのが好きだった。
誘われても断っていたし、何より他のみんなのように動けない自分が嫌いだった。
だから小学生の頃に友達と外で遊んだ記憶はほとんどない。
中学生になって必ず運動部に所属しなくてはならないという学校のルールで消去法で入った軟式テニス部では運動出来ない僕はすぐに一部の先輩達のいじめの標的となった。
最初は軽くボールをぶつけられたり変なあだ名で呼ばれたりしていたけどそれはすぐにエスカレートし入部して2週間で殴る蹴るの暴力に変わり、お金を取られたりもした。
そんな時、僕は怜治に出会った。
同じ部活だけどちゃんと話をしたことがなくて、
先輩達とは仲がよさそうに話していた。
だから先輩たちが怜治を連れてきた時はこの人も僕をいじめるんだって思った。
部室を開けて先輩たちに連れられて中に入った怜治は僕を殴っていた先輩を見て笑った。
「え?w 〇〇先輩パンチの仕方変じゃないっすか?w」
怜治がそう言うと他の先輩達も笑い始めた。
「確かにw」
「めっちゃ肘あげてんのなんなの?w」
「もっかいやってみw」
他の先輩達に笑われて僕を殴っていた先輩は激怒した。
「うるせぇ!一年が先輩笑ってんじゃねぇぞ!」
その先輩は怜治に向かって殴りかかった、
怜治はそれを顔面で受け止めるとまた笑い出した。
「先輩パンチ力もしょぼいっすねw今日からカスパンチ先輩って呼びますねw」
その発言にまた他の先輩達も大爆笑している。
そして怜治は床に倒れていた僕の所にきて手を差し伸べてくれた。
「大丈夫?立てるか?とりあえず保健室いこうぜ」
「え…あ、うん。ありがとう…」
僕は少し迷ったがその手を掴み立ち上がった。
それから二人で保健室に向かった。
「あのカスパンチ先輩のパンチ痛くなっただろ?」
「えー…でも確かに他の先輩よりは痛くなったかも…」
怜治の言葉に僕が同意をすると怜治は笑ってくれた。
「お前もなかなか言うじゃんwお前いいわ気に入ったw俺は伊藤怜治、これからよろしくな。」
怜治はそう言ってまた手を差し出してきた。
「ぼ、僕は山本健、です。よろしくお願いします…?」
「なんで疑問形なんだよw」
「あはは!」
こうして僕らは一緒にいるようになった。
怜治のお陰かげで次の日から先輩たちからのいじめがなくなった。
それどころかいじめに加担していなかった他の先輩達が気にかけてくれるようになった。それから悠君や俊君とも出会って僕らは高校を卒業するまで、4人でいろんなことした。
でも高校を卒業して就職した僕に待っていたのは地獄だった。
入社して2年程経ったあたりから残業が増えて最後は毎日残業だった、家に帰れない日も月に10日はあったしもちろん土日祝日も休みはほとんどなく、すべてサービス残業扱い。先輩や上司からのパワハラもあって僕の心はボロボロだった。
それが2年続いたある日僕は一週間ぶりに自宅に帰るとそのまま倒れてしまった。
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