第13話
【side:伏見 ちひろ】
鈍い体の痛みで私は目が覚めた、
体は痛いしスーツはボロボロ、挙句の果てにメガネのレンズも割れている。
私は痛みを我慢しながら起き上がろうとするが植込みの上に落ちたようで起き上がるのに苦労した。やっとの思いで起き上がると壊れたメガネを外し異空間から取り出したスペアをかける。そして辺りを見渡すと体育館からかなり吹き飛ばされた事を知った。
「嘘、こんなに飛ばされたっていうの?あそこから100メートル以上は離れてるんじゃないかしら…さっき身体強化してなかったら最悪死んでたかも知れないわね。」
自分の身に起きた出来事を振り返って改めて背筋が凍るような思いだった。
「伏見さん!大丈夫ですか!?」
そんな事を考えていると監視役の男が駆け寄ってきた。
「私は大丈夫です。それより保護対象は無事ですか?」
スーツに付いた葉っぱを払いながらその後の事を聞いた。
「保護対象は無事に伏見さんの空間に戻ったようです。それと襲撃者は先ほどの衝撃波で吹き飛びそのまま消えました。」
「消えた?見失ったのではなくですか?」
「はい、文字通り消えました。まるで暗闇に溶けるようにです…一応落下地点と思われる場所も確認しましたが落ちた形跡は確認されませんでした。」
「わかりました。貴方は再び監視に戻ってください。私は至急復元系の異能者を連れてきて復旧作業を行います。それと再度の襲撃に備え護衛役も手配しておきますので合流してください。」
そう指示すると監視役はすぐにその場を離れて監視に戻った。
私は先ほど監視役が言った「暗闇に溶けるように」という言葉が気になっていた。
そして一つだけ思い当たることがあった。
「もしかしてあの時の異能者のことかしら?と言うことは背後にはあの結社が絡んでるのかもしれないわね。」
また報告書に書くことが増えてしまったと思いながら私はスマホで関係各所への根回しの電話をかけ始めた。
【side:謎の襲撃者】
体育館から十数km離れた地元では1番大きなホテルの高層階の一室、誰も居らず部屋の電気は消えているがカーテンが空いている為、月明かりが部屋を明るく照らしてした。
一瞬、雲が月を覆い隠し部屋が暗闇に包まれた、
そして再び月が現れると先ほどまで誰も居なかった部屋に人影があらわれた。
その人影は覚束ない足取りで綺麗に整えられたベッドまでたどり着くとそのまま倒れ込んだ。
「あぁ、なんて事だろう!こんな衝撃は久しぶりだ!」
中性的な顔立ちに中性的な声、男女どちらにも見えるその自分は先ほどの出来事を思い出しベッドで悶え始めた。
「最近はつまらない事ばかりで飽き飽きしていたけどまさか結社の任務で遥々来たこんな田舎であんな出会いがあるなんて!」
「あの驚きの表情、友人を守り合う友情、そして劣勢からのただの逃走じゃなくて反撃の一撃!」
「正直フラッと立ち寄っただけだからなにも期待してなかったけど予想外だよ。」
その人物は自分の腹部を愛おしそうに撫で回す。
「3人ともすごく恰好良かったなぁー今度は戦いじゃなくてちゃんと話がしてみたいな。」
そう言って顔を紅潮させてしばらくベッドで悶えていた。
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