第12話
【side:伏見 ちひろ】
定時で帰宅するはずだった私は、
上司の指示で誰もいなくなったオフィスで一人今日の緊急保護案件の報告書を作成していた。
「はぁ…なんでわざわざ今日中に作成しろなんて言い出したのかしら、いつもは適当な癖に偶に気まぐれで面倒なことを言ってくるから困るわ。」
そんな上司の愚痴を言いながらも凄まじい速度でタイピングをしてどんどん報告書が出来上がってくる。もう少しで完成するといったタイミングで不意に机の上に置いたスマホが振動した。
「絶対良くない連絡だわ…」
振動した瞬間から嫌な予感が止まらない。
案の定電話の相手は監視の担当者だった。
「はい、伏見です。」
「…そうですか、わかりました。すぐに向かいます。」
監視役からの報告はやはり最悪なもので、
保護対象が私の能力で作った空間から脱出したとの事だった。
私の異能力は空間のコピーとそのコピーした空間の間の自由な移動である。
今の保護という業務を任されているのはこの異能力があるからだ。
そして移動も優秀な為、
タクシー代わりにされたり、
こうやってすぐに呼び出されたりするのは正直嫌だ。
そしてこの異能力の制約として必ず出入口を設定する必要があり、
空間の中に入れるのは私の意思で制限できるが空間の中から出ようとするのは制限できないようになっている。
それ以外の制約もいくつかあるがいま重要なのはその点だ。
だから万が一出られた時の為に外に監視役を置いていたのである。
「だからって普通あの状況で外に出ようとする!?しかも出るなって言ったのに!やんちゃな高校生とかじゃないんだから全員いい大人なのよね!?」
通話を切るとすっかり冷めたコーヒーを一気に飲み干しコップを乱暴に机に置くとオフィス内に用意された私専用のドアを開けて体育館へ移動しようとする。
「あれ、通じない。仕方ないわね、近くの建物に飛びましょうか。」
なぜか直接体育館に移動出来なかった為近くの別の建物に飛んだ。
それから急いで私は体育館に向かった。
途中で監視役から2度連絡が来たがすぐに着くと思って電話には出なかった。
そしてやっと体育館の正面玄関にたどり着いたと思ったら保護対象の二人が何者かに襲われていた。
「なんで今日はこんなにトラブル続きなのかしら!」
私の異能力は直接戦闘では使えないが気力による身体能力の強化は出来るので何とか助けないとと思い自身を強化して二人の方に一気に距離を詰めた、
「え?」
しかしその瞬間一人が横に飛びのいたと思ったら大きな叫び声と強力な衝撃波で私は吹き飛ばされ意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます