第11話
「ちっ!」
即座に反応した俊に俺は突き飛ばされた、
振り下ろされた大きな斧は俺と俊の間の地面に当たるとコンクリートは粉砕されその破片が俺たちに降り注いだ。
間違いなく俊に突き飛ばされなければ俺に直撃していた一撃だった。
「は?」
突き飛ばされ地面に腰を付いた俺は突然の出来事に理解が追いついていなかった。だが逆に何も考えられない状態だからこそ次の一撃に反射的に反応が出来た。
先ほど振り下ろされた斧がいつの間にか長剣のようなものに変わっていて今度はそれを俺に向かって薙ぎ払ってきた。
「あっぶな!」
奇跡的に反応して仰け反ると目の前を長剣が通り過ぎた。
まずいと思った俺はどうすべきか考えた。
だが俺が行動するよりも早く今度は長剣が槍のような形に変わり俺に向かって突き刺そうとしていた。
「させるかよ!」
ダメだ、と思った瞬間に俊がその槍を横から蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた槍は人影の手から離れ数メートル先に転がった。
「今のうちに逃げるぞ!」
俊は俺の腕を掴んで強引に立ち上がらせると、
体育館の入り口を指差した。
「あの中に入ればなんとかなるはずだ!」
俺はその言葉を信じて走り始めた。
体育館まではおよそ30メートル、俺は走るのは苦手だがそれでも走るしかない。
しかもこんな状況でも弁当が入った袋は手放していない。
「くっそ、運動不足のおっさんにダッシュはキツイってのに!」
必死に走るが人影もすぐに追いかけてきた、
先ほど俊が蹴り飛ばした武器はいつの間にか手に持っていて槍の形をしたままだった。
「逃しませんよ」
そして人影は俺に向けて槍を構えるとダイナミックなフォームでその槍を投擲してきた。
「怜治!」
先に入り口についた俊が俺の背中に異能力で壁を作ってくれたようで、
その壁が槍を防いでくれた。
「やりますね、ではこれならどうでしょう?」
先ほどまで一本だった槍が10本程に増えていた。
そしてそれが一斉に俊が作った壁に当たると簡単に壁を砕いた。
「くそ!俺の異能力じゃその威力は止めらんねぇ!」
俊が悔しそうに叫ぶ、
だがおかげでもう扉は目の前だ!
しかし、追ってきた人影も俺のすぐ後ろにいて、
手を伸ばせば届きそうな程の距離まで迫っていた。
俺は捕まる、
と思ったが扉を開けて待っている悠の顔を見て閃いた。
「悠!思いっきり叫べ!」
俺がそう指示すると悠はマスクを外しその大きな身体に目一杯息を吸った。
そして悠が叫ぶ寸前に俺は悠の前を開けるように横に転がった。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「なっ!」
悠の衝撃波で追ってきた人影は先ほど俺が俊を蹴り飛ばしたのとは比べものにならない程の距離を吹き飛んだ。
横に転がった俺も数メートル飛ばされた程だ。
「いてて…これなら大丈夫だろ」
俺は立ち上がりよろよろと俊と悠のもとに向かった。
ドアの中に入る前に後ろを確認したが流石に直撃して吹き飛んだので追ってきている様子はなかった。
それからすぐに中に入ると入り口のドアを閉めてその場にへたり込んだ。
「はぁはぁ…悠助かったわ、俊もありがとな。」
息も絶え絶えに俺は2人に感謝の言葉を伝える。
「ほんと危なかったわ、とりあえずここなら別空間だから大丈夫なはず」
俊も流石にしんどかったのか俺と一緒に床に座り込んだ。
「ハッハッハ!お前達の助けになれてよかった!」
「「ぐへっ!」」
最後の最後に悠の笑い声で俺と俊は一緒に吹き飛ばされた。
俺はそのまま意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます