第10話

【side:佐藤 俊】


俺は目の前の出来事に理解が追いつかないまま地面に転がっていた。


「ゲホッゲホッ!ちょっとお前それ!」


怜治が目の前の黒い靄が消し飛ばした事と、

靴に神力が纏われていた事、

この2つのショックで俺は立ち上がれなかった。


あと普通に怜治のドロップキックがエグかったのもある。

あれ人にやっていい威力じゃねぇわ。


俺はそのまま地面に大の字で仰向けになって夜空を見上げる事しか、出来なかった。




【side:伊藤 怜治】


俺は先に飛び出して行った俊に制裁のドロップキックをかましたら何故か知らんが漫画みたいな吹っ飛び方をして1人でドン引きしていた。


「えぇ…なにこれ怖い…」


「はぁ…それ蹴り飛ばした本人が言う事じゃないからな?」


地面に仰向けで転がっている俊に非難されてしまった。

だが俺だってこんな威力出るなんて思ってないからな。


「おら、さっさと立てやコンビニで夕飯買って急いで戻るぞ」


「だから人を蹴り飛ばして言う事じゃねぇだろ…」


「うるせぇよ、昔から言ってただろ。勝手な行動したらしばくって」


「昔から暴君すぎんだよお前はw」


初めて話すようになった中学の頃から俺達はずっとこんな感じだった。30歳を過ぎてまたこんなやり取りが出来る事を俺は嬉しく思ったし、俊も非難しながらも笑っているので多分同じ気持ちだろう。


それから5分ほど歩いた先にあるコンビニで4人分の弁当や飲み物を買ってまた体育館へ向かって戻り始めた。


「あのさ、怜治お前は身体に変化とか感じないのか?例えば変なモノが見えるとか、変な声が聞こえるとかさ?」


先ほどのまで静かだった俊がそんな事を聞いて来た。


「別に変なモノが見えんのは14連勤したときとかいつもだし、幻聴みたいなのもしょっちゅうあるわw」


「何それ社畜怖い」


普段の会社での仕事を思い出して辟易としながらそう答えた。


「いやそうじゃなくて、健と悠みたいに異能力的なものに目覚めてるって言われただろ?だからお前も何か変化があるんじゃないかと思って聞いてんだよ」


珍しく真面目な雰囲気になった俊に少し驚いた、

だが正直心当たりはない、

変なモノが見えるのは会社に勤めてから偶にあったし別に害があるわけでもない、それに余計な事を言って心配かけるのも悪いので黙っている事にした。


「特にないな、正直まだあいつらの異能力?とか頭では存在してるのを分かったけど、心の整理がついてないしな。そう思うと自分にそれがあるとか考えられんわ。」


「そうか、なにかあればちゃんと言えよ?お前は昔から1人で抱えるタイプだからなw」


俊は何か言いたげではあるがいつもの調子に戻ってそんな事を言ってくれた。


「お前らに言ったら首突っ込んでややこしくされるから仕方ないだろ」


「それは確かにそうだわw」


俊と2人でそんな事を言って笑いあっていると体育館の正面玄関が見えてきた。

入り口の扉は悠が開けたままにしてくれていて俺達の姿が見えたからか悠がこちらに手を振ってくれている。

俺と俊はそれに気付き手を振り返した。


だがそれを遮るように俺と俊の目の前に突然人影が現れた。


「こんばんは、そしてさようなら」


その人影はそう言うとその身の丈より大きな斧を振りかぶり俺達に向かって勢いよく振り下ろした。






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