第9話


【side:佐藤 俊】


俺は病院のベッドで目が覚めてからずっと焦っていた。


実家が昔から物の怪類を退治する普通の人には言えない家業をしていたこともあって、

長男として生まれた俺は幼いころから修行や知識の習得、そして実際に物の怪の討伐をしていた、

しかしそれも俺が中学に入学した頃までだった、

4つ下の三男が俺や次男より強大な気力に目覚め一気に将来の当主候補となったからだ、それから次男は分家に預けられ俺は三男の予備としてそれなりに育てられた。


それから数年後、もちろん怜治達にその事を明かすことも出来ず、高校を卒業した俺は実家から離れ一人暮らしをしていたがそれでも年に数度は実家から呼び出され物の怪退治をやらされていた。


30過ぎまでこんな生活をしていた俺はすっかりこの生活や実家の事に嫌気がさしていた。そんな時、中学からの友人だった怜治に久しぶり集まろうと言われ俺は数年ぶりに気持ちが大きく弾んだ。


しかしそんな時、実家から呼び出しがあった、

だが俺はそれを無視して友人たちと集まる事を優先した。

正直ついにやってしまった!とは思ったが後悔なんてなかった、


だが闇鍋をしたら謎の力で爆発するなんて誰が予想できるだろうか。


そして病院のベッドで意識を取り戻すと、

同じ病室で眠っていた健と悠から気力のようなモノを感じ、

それと同時に自分の中に謎の力を感じてしまった。


慌てた俺はすぐに異能力特別対策室に病院の電話から匿名で連絡をした。


異能力が制御出来ないと物の怪を呼び寄せる原因になる、

そして異能力自体が珍しいモノだから勿論それを悪用しようとする奴らもいる。

眉唾だが異能者を殺すと殺した者の異能力が強くなるなんて話も聞いた事がある。

俺はもとから気力を抑える訓練していたので大丈夫だがこの二人はそうもいかない、

だから俺は友人たちの保護の為、実家ではなく異能力特別対策室に連絡をした。


それから病室に戻りナースコールを押し看護師を呼んで爆発騒ぎの顛末と先に一人目を覚まして帰宅した事を聞いていると対策室の奴らが来たようで俺達は別の病室に移動させられることとなった。


移動中に俺は何も知らない一般人の振りをしていたが途中で実家から連絡用の式神が飛んできたところを見られたのでおそらく伏見って人にはバレていただろう。


移動した先の病室で誰もいなくなったことを確認して式神に刻まれたメッセージを見ると、「緊急事態 すぐに戻れ」とだけ書いてありそれが俺をまた焦らせた。


それから健と悠が目を覚まして看護師から聞いた爆発騒ぎの事を説明した、

途中で二人の異能力が暴走したがついでに俺も自分の異能力を確認したかったのでいいタイミングではあった。

そしてその間も俺は一人で先に退院した怜治のことを心配していたが、

見舞いに来たあいつのいつものダルそうな姿を見て安心した。


だがそれも束の間で俺はあいつから漏れ出ている得体の知れない力にまた頭を抱えることになった。


色々聞きたいこともあったが伏見が出てきたのでとりあえず先に説明して貰うことを優先した。

最後に余計な事を言って金的をくらったのは正直あいつらと久しぶりに一緒にいて精神年齢が高校生に戻ったせいだと思っている。

だから俺は悪くない。

あと俺金的される瞬間に異能で壁張ったけど普通に壁ぶち破られたんだけどあの人絶対ヤバい人だろ…


その後、伏見に半ば置きざりにされるように体育館に放置され先ほどの金的のダメージもやっと回復した俺は外に出るために少し強引だが怜治たちを説得し体育館の玄関から外にでた。


伏見の異能力は詳しくわからないが、

本物の体育館と同じく街の中心部から少しはなれた郊外の場所に出た。


そして俺は体育館から少し離れてすぐに連絡用の式神を実家に向けて飛ばした。

丁度飛ばし終えたタイミングで怜治が俺の後追って走ってきた。


だがその瞬間俺と怜治の間に大きな黒い靄が現れた、

これは物の怪が現れる前兆で靄の大きさから大体の強さがわかる、

そしてこの大きさは今まで俺が見たことがないと断言できる程の大きなサイズだ。


「怜治!来るな!」


俺は大きな声で怜治を制止しようとする。

だがあいつは走った勢いのまま飛び上がり、


「なに勝手なことしてんだボケぇぇぇぇぇ!」


靴を光輝かせながら黒い靄ごと俺にドロップキックをかましてきやがった。


「ぐべぇらっっっ!!!」


俺は数メートル吹き飛んだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る