第8話


それから暫く床でのたうち回る俊を無視して俺と悠はまだ力の制御が出来ない健の為に体育館に病室からベッドを運んでいた。


「よし、とりあえずど真ん中に置いておけば良いだろ。」


「うむ、流石に寝ている間にぶつかられたら俺達はひとたまりもないから仕方なし。」


「ごめんね、迷惑かけて…」


健は申し訳なさそうに床に座っている。


「気にすんなって、お互い様だろ?それに俺たちの間に遠慮はなしって昔から言ってんだろ。」


「あと悠、お前は無駄に喋るな。いま、うむって言った時に少し衝撃波出してたぞ。」


「ハッハッハ!すまんな!」


「ぐへっ!」


悠の笑い声に俺はまた吹き飛ばされ体育館の床を転がった。


「だから喋るなって言ってんだろ!これでも付けとけ!」


俺は身体をほろいながら起き上がるとポケットに入っていた新品のマスクを悠の顔面に叩きつける。


「ったく、本当に訳のわからん事に巻き込まれたもんだよ。」


そう愚痴っていると俺の腹が鳴る、

スマホで時刻を見ると19時を少し過ぎたあたりだった。


「そうだよな、よく分かんないけど生きてんだから腹は減るよな。さて、伏見さんが置いていったカップ麺でも食うか」


俺は伏見が置いていった激辛カップ麺の山から何を食べようかと漁っているとある事に気付く。


「なんで全部激辛系なんだよ…あれ?お湯ってどうしたらいいんだ?病室にお湯を沸かせるやつあったか?」


病室に戻って探して見るとそんなものは勿論ない、

それならと体育館に戻り事務所など目ぼしい場所は探したが見つからなかった。


「はい、詰みましたー。今夜の夕飯カップ麺丸齧りに決定でーす」


俺は若干ヤケになりながら健と悠にそう言う。


「うーん…どうしてもって言うならシャワールームのお湯とか…?」


健が少し考えてシャワーのお湯を使う事を提案する。


「どっちにしてもマトモな飯にはありつけなそうだな」


悠は俺に喋るなと言われたので無言で頷いている。


「あー、危なく新しい扉を開く所だったわ。いや、もう開いてしまったか?」


俺たちがそんな話をしているとやっと復活した俊がくだらない事をほざきやがった。

ムカついたがいつもの事だと自分に言い聞かせて俺は俊にお湯を沸かすものがないことを説明をした。


「それなら外に出て食べてくればよくない?」


「いやいや、外に出るなって言われただろうが!」


「でもコンビニくらいなら行ってもよくない?」


伏見に絶対に外に出るなと言われた言葉を思い出して俺はそれを止める。


「それって健とか悠みたいに異能力?がコントロール出来ないと危ないからだろ?それなら俺と怜治が行って2人の分も買ってくればいいだろ?」


「それなら、いい?のか?」


「それに一応俺らは病み上がりなんだしカップ麺じゃなくてもう少し栄養あるもの食いたいじゃん?」


俺は俊の言葉と伏見の言葉の間で揺れていた。


「よし、それなら俺だけでも行ってくるわw」


悩んでいる俺を尻目に俊は外に出ようと玄関に向かった。


「待て待て、わかったよ。俺もいく。財布持ってないやつが行ってどうすんだよ。あと一応扉が閉まると戻って来れない、なんて事があると困るから悠は玄関で扉が閉まらないよう押さえて待っててくれ。」


俺は出て行った俊を追いかけながら、

念の為悠にドアを開けて待っていてもらう事にした。



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