第7話
「えーっと、保護って事は僕らはどこかに連れて行かれるって事ですよね…?」
健は相変わらず壁にめり込んだまま不安そうに俯いている。
「そうですね、厳密に言えば暫くの間この空間の中で過ごしていただく事になります。」
「そしてある程度異能力を制御できるようになり、日常生活に支障をきたさないようになって頂きます。」
伏見はそう言って2度手を叩くと先ほどまで散らかり荒れ果てていた病室が広い体育館のような場所に変わった。
「ここは市民体育館か?」
見覚えのある建物の内観と窓から差し込む夕陽に少しの懐かしさを感じた。
「正確に言いますとそのコピーですが。まぁいまは私の異能力で作った本物とは別の場所、とだけ思って頂ければ大丈夫です。」
伏見はメガネの位置を直しながら俺達にそう言った。
「てか急にそんな事言われても俺らも仕事の事とかあるし困るんだけど」
俊が珍しくまともな事を言っている。
確かに俺もそうは思うがそもそもコイツはいま仕事してないんじゃ無かったか?
「皆様の会社やご家族には私達の方からすでにご連絡を差し上げていますのでそういった心配もございません。」
それを言われるのは予想していたようで、
すでに手は打たれていた。
「うむ、であれば問題ないな」
悠は腕組みをしながら伏見の言葉に納得をしていた。
「今日はもう定時になりますので私は帰らせて頂きます。詳しい説明などは改めて明日させて頂きます。あちらの扉を開ければ先ほどの病室に出ますのでそちらでおやすみください。夕食と明日の朝食はこちらをどうぞ。」
そう言って伏見は体育館の男子更衣室と書かれた部屋を指差した。そしてどこから取り出したのか大量のカップ麺を床に山積みにした。
「あの、すいま「それでは定時なので失礼します。」
健が何かを聞こうとしたが伏見は定時だと言って一礼すると消えていった。
「あ、おい!ちょっと待てって!まだ聞きたい事があったんだけど。」
俺たちの目の前には山積みのカップ麺だけが残されていた。しかもどれも激辛系のカップ麺だった。
「あのタイプは仕事は出来るけど彼氏出来なくて婚期を逃すタイプだなw」
「一つお伝えするのを忘れてました」
俊が伏見の悪口言った瞬間、再び伏見が現れて俊の身体は驚きでビクッと跳ねた。
「絶対に体育館の玄関から出ないでくださいね。外に出てしまいますから。窓やそれ以外の外に出れそうな所は開きませんが玄関だけは開きますのでくれぐれも出ないようにお願いします。」
俺達にそう言って注意をすると最後に俊の方を向いた。
「あまりデリカシーのない事を言われますとハラスメントで訴えますよ?」
伏見は笑顔でそう言うと俊の股間を蹴り上げた。
「う゛ぐっ!」
「それでは今度こそ失礼します」
再び伏見は一礼して消えていった。
床にうずくまる俊を見ながら俺達は気を言葉には気をつけようと心に誓った。
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