第2話 「境内のはずれ」
約束の10時、
鳥居の外に建ててある看板には、『この神社は江戸時代に酷い飢饉にみまわれた民を救うために祀られた神社である』と記されていた。
カナタ「なるほど...飢饉がキッカケだったのか...。飢饉で多くの子どもが口減らしにされたと本で読んだが...それの弔いも兼ねてんだろう。」
ユイ「うわ...クモの巣だらけじゃない...服に絡みついたんだけど...。」
ナナミ「にしても随分木が多いわね。どれがその『
ソラ「この境内のどこかにあるはずなんだよ...。本には地図も書いてあったけど、掠れに掠れてよく見れなかったから...ん?」
僕はふと、本殿の右側にどこへ通じるのか分からない抜け道があるのに気づいた。昼間なのに明かりのひとつも無いその道がどうも気になった僕は皆に声をかけた。
ソラ「ねぇ、あそこに何か抜け道みたいなのない?」
ナナミ「ホントだ。でもめっちゃ暗くない?」
カナタ「木が生い茂りすぎて日光を遮っちまってんだろう...。だが、もし向こうに青桜があるとするなら......。」
ユイ「行ってみる価値はある。ってことね。」
ソラ「...よし、行こう!」
僕達は、本殿の横をすり抜けて抜け道に入った。少し歩いて抜けると、そこには本で見た通りの青桜が花を咲かせてそびえ立っていた。
ソラ「すごい...!本当にあったんだ。」
ナナミ「キレイ......。」
ユイ「真夏なのになんで花が...。」
カナタ「多分だが、狂い咲きでも起こってるんだろう。もしくは年中咲いてるか...。」
僕達は青桜のあまりの美しさに魅了され、しばらくの間青桜のその青い花を眺めていた。
もう少し近くで見てみようと近づいた時だった。
ナナミ「ひゃあっ!?」
バフンッとクッションのような音を立てて、ナナミが転んだ。よく見ると、そこには青桜の根が長く太く伸びており、それにつまづいたのだろう。それと同時に、僕は本に書いてあったとある分を思い出した。
『青桜のいかなる所にも触れてはならない。触れたら最後、戻れることは無い。』
カナタ「...オイ!アレ見ろよ!」
カナタが突然叫んだ。指さした方を見ると、たしかにあったはずの抜け道が無くなっている。
つまり、帰り道が無くなってしまったのだ。
ユイ「ウソ...帰れなくなってるじゃない...!」
カナタ「ここからどうするってんだよ...。」
ソラ「とりあえず抜けれそうな所を探さないと...。」
ナナミ「...ねぇ、何?あの建物...。」
ナナミが目にしている方向を見ると、見たこともない大きな館が建っていた。人気があまりに無い中で、ぽつりとそこに在るのは少々不気味ではあるが、そこ以外進める所がなかった。
カナタ「オイ、もしかしたら誰か住んでんじゃねぇの?」
ユイ「むしろこんな所に人なんて住んでるのか怪しさプンプンなんだけど...。」
ナナミ「とりあえず、一声かけるだけかけてみない?」
ソラ「そうだね...。もしかしたら、道が分かるかもしれないし...。」
一縷の望みをかけた僕達は、帰り道の探索を兼ねて館に向かった。
けど...まさかあんなことが起こるなんて......。
ーーー次回、「1人目の犠牲者」ーーー
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