青桜(せいおう) 〜その桜に触れてはならない〜

白玉

第1話「古のハナシ」

 ジジジジジジ......

 夏になり、あちこちで蝉が鳴くようになってきた。今年は例年に比べてやけに五月蝿い。

 夏休みに入った桜海おうみ中学校の2年生ソラ(ここからは僕)は、いつものように街の図書館で読書をたしなんでいた。

 オカルトのような、非現実的な書物を見るのが好きな僕は、いつも古びた本を読んでいる。


「『オカルト』のコーナーは大体読んだしなぁ......ん?」


 ふと、やけに古い背表紙に目が入る。

 そこには『桜海の都市伝説』という題が記されていた。


「『桜海の都市伝説』...?こんな本今まであったか??まあ...読んでみるか...。」


 そう思い、テーブルに戻ってページを慎重にめくる。そこには、桜海市に伝わると言われている数々の都市伝説が記されていた。

 その中に、とあるタイトルを見つける。


『神社にそびえる青桜せいおう


 読み進めると、街外れにある古い神社に「青い桜を咲かせる木」というものがあり、それに触れた者は誰1人行方が分かっていないとの事だという。僕は夢中になって青桜の話を読んでいた。


 そして夜...


 ソラ『っていう桜があるんだってさ』

 ユイ『青い桜って見たことも聞いたこともないわよ...ホントにあるの?』

 カナタ『触れた人は誰一人行方知らずってなんだか気味が悪いな...』

 ナナミ『神社にあるってくらいだし、神様でも怒らせちゃったんじゃないの?』


 仲のいいクラスメイト同士でグループLINEをしていた。僕含めたこの4人は同じオカルトな話が好きなメンバーだ。僕が図書館で読んだ『青桜』の話をすると、3人はすぐに興味を持った。


 ナナミ『じゃあさ、今度の日曜にその神社に行ってみない?』

 ソラ『えっ?本当に見に行くの??』

 カナタ『まあ...本当にあるってんなら確かめる価値はあるな...。』

 ユイ『そうね〜...まあこんな時期に桜なんて咲いてないだろうけど。神社って言ったらこの街じゃ1つしか無いしね。』

 ソラ『そうだね...。1度見に行ってみようか。』

 ナナミ『じゃあ10時に桜海のイオン集合で良い?』

 カナタ『ああ、良いぜ。』

 ユイ『私も〜。』

 ソラ『僕も大丈夫。』

 ナナミ『よし!そんじゃ今日はこの辺で!』

 全員『また今度〜!』


 この時、僕はまだあんな残酷な事が起こるなんて、知りもしなかったーーー

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