第8話
誰か待っているであろう人、どこかへ向かっている人、誰彼構わず声をかけたが誰も振り向いてくれずただ忌避の目のみが向けられるのみであった。当然のことであるがその当然をそう思えない程に焦っていた。何にと言われれば何ともつかぬただ漠然とした焦燥感、強いて言うなら楽に生きられる人間になりたかったのだと思う。時間の進みが徐々に遅くなっているのと比例して焦燥感は強くなっていった。一向に何も得られない、楽に生きるためになぜ苦行を強いられているのだろうかそんなことが思考をかすめた。そこからだんだんそれが大きく意識せざるを得ない存在感を放ってくる。息苦しい息苦しい、意識しないとちゃんと呼吸さえままならない。呼吸によって空気と共に自分は極端に自堕落に生きることさえままならない善にも悪にもなれない半端ものであるという意識が肺の中を満たし、その場に座り込んだ。この現実を見たくはないと呼吸を止めるが体が否応なしに空気を取り込み現実を見せつける。どうすべきかどうするか何をしなければならないのか、わからないが体は勝手に動きはじめていた。体が動いている意識さえなく、ただ目の前の世界を拒絶しようとしていた。気がつくと布団を被り家で震えていた。
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