第10話

 2人で下校している。


 今日は頑張った。


 帰る時に春さんにさようならを言えた。


 満足気な私を見て、あなたはすごく嬉しそう。



「良かったな」


「うん」



 自然と足取りも軽くなる。



「明日は休みね」


「そうだな、土日なにしようか」


「動物園に行きたいわ」


「久しぶりだな、動物園は」



 学校からの帰り道をあなたと歩く。


 今日は私の家に帰った。


 何もなければ毎日交互にお互いの家を行き来する。


 こんな風になったのは私のわがままが始まりだった。


 小学生の頃、あなたの家に一緒に帰り、そのまま帰ることを拒否して一緒に寝た。


 あまりわがままを言わない私が言ったわがまま。


 両親達もしょうがないかと苦笑して、許してくれた。


 自分の意思であなたと一緒に寝た時に、あなたがいないとダメだって、改めて自覚した。


 それからは週に何回かあなたの家に泊まって、そのうちあなたを私の家に連れて帰って強引に泊まらせて、気付いたら交互に行き来するようになった。



「今日も疲れたわ」



 私の部屋に入り、精神的な疲労からベッドに倒れ込んでしまう。



「横になるなら着替えてからにしろ」


「着替えさせてちょうだい?」



 あなたに靴下を履いた足を差し出す。


 ため息を吐いて、私の靴下を脱がせてくれるあなた。



「ほら、他は自分でやれ、早く着替えろ」


「着替えさせてくれないの?」



 挑発するように、スカートをひらひらと揺らしてみた。



「そうかそうか、わかった」



 あ、やばいと思った時には手遅れだった。


 いつも優しい表情を浮かべるあなたが無表情で私の着る制服に手を掛ける。



「あ、あの、ちがくて、ふざけただけで」



 私の言い訳に耳を貸さず、シャツのボタンを外していくあなた。



「ほら、腕上げろ」



 冷たい声にびくっとしてしまう。


 言われるがままに動き、シャツを脱がされ肌着姿になってしまった。



「次はスカートだな」



「あ、あの、ごめんなさい、ちゃんと自分で着替えます」



「ファスナーどこだ?わかりづらいな」



「ごめんなさい!!」



 珍しい私の大声に、やっと止まってくれた。


 じっと無表情で私を見つめるあなたに。



「あの、その、疲れたことを言い訳にして、からかってしまってごめんなさい。あなたに甘えたくなってしまったの」



 ため息を吐くあなたにびくっとしてしまう。



「お前はすぐびびるくせになんでそういうことをするんだ?」


「だ、だって、私に全然手を出さないから」


「いつも言ってるだろ?そういうのは責任取れるようになってからだって」



 大事にしてくれるあなたがすき。


 たしかに緊張してしまうけど、少しくらい手を出してくれないと、魅力が無いのかなと思ってしまう。


 キスはたまにするけど、それだってあなたからは滅多にしてくれない。


 私がもっともっとってなりかけると、さりげなく落ち着かせてくれたりする。



「着替えてくるから、お前もその間に着替えておけよ」



 そう言って部屋を出て行くあなたを見送ると、深呼吸をして心を落ち着かせてから起き上がり、部屋着に着替えた。

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