第7話

 夜ご飯とお風呂を済ませた後、私はそれなりに持ち直すことができていた。


 今は寝るまでの2人でする勉強の時間。


 お互いで確認し合い、どこまで理解して、どこが不十分か、少しずつ知識を積み上げていく。


 大した趣味もなく、勉強くらいしかやる事がなかった私。


 私に合わせて、勉強に付き合ってくれるあなた。


 小学生の頃、遊びに行って良いんだよ?と言った私に、お前と勉強してる方が楽しいって、笑いながら言ってくれてすごく嬉しかった。



「そろそろ、寝ましょうか」


「もうそんな時間か」



 いつも9時過ぎには眠る私。


 眠るのが遅くなっても10時前には眠る。


 そんな私に合わせてくれるところも好き。


 小さい頃から一緒に寝てるせいか、俺も同じくらいの時間には眠くなるようになったんだよって、私が負担を感じないよう言ってくれる。


 あなたは言動全てで私を安心させてくれる。


 そのおかげで私は私でいられる。



「ありがとう」


「いいんだよ、俺たちの仲だろ?」



 昔からそう。


 なんでもないように私を受け入れて、私を支えてくれる。


 笑顔の練習、人と話す練習、あなたに隠れて練習しては上手くいかなくて、心の中で泣いているとどこからか現れて抱きしめてくれる私の大好きな人。



「ねえ」


「なんだ?」


「あなたの悩みを教えて」


「悩みか、いろいろあるぞ」


「例えば?」


「お前が可愛過ぎて外に出したくない」



 真面目な顔で急に言われて、心臓がどきどきしてしまう。


 言葉にならない声が漏れて、思考がまとまらない。



「後はそうだな、ちらちらと欲を浮かべた目でお前を見てる奴らの目を潰したくなる」


「えっと、あの、ちがくて」



 あなただけだろう、こんな風に私を戸惑わせるのは。


 ふとあなたの目を見ると、からかいの色が混じっている。


 怒って胸元を叩いても、あなたは笑いながら私を撫でて誤魔化そうとする。



「ずっと一緒にいるんだから、無理しなくていいんだよ。2人でゆっくり成長していこうって昔約束しただろ?」



 私がまわりにうまく馴染めずに、泣きそうになってた時にしてくれた約束。


 手を引いて、私とまわりの緩衝材になってくれた。


 そうして友達ができた時はすごく嬉しかった。


 しばらく会っていないけれど、あの子達は元気にしてるのかな。



「私も、あなたが私にしてくれるように、力になりたいの」


「お前がいるだけで俺は頑張れるからなぁ」



 平然とそんなことを言う口を手で塞ぐ。


 恥ずかしくて心臓がもたない。



「もう寝る」



 照れ隠しであなたに背を向けて目を閉じると、後ろから優しく抱きしめられる。


 おやすみの言葉を貰い、私は眠っていく。



「本当に寝付き良いよな、お前は」



 あなたが何か言っている気がする。


 あなたの声と温かさに包まれて、私は意識を落とした。

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