第5話

「おはよう」


「ああ、おはよう」



 あなたより先に目覚めて、あなたの寝顔を眺める。


 私の幸せな時間が終わり、2人で起き出した。


 お母さんと一緒に私とあなたのお弁当を作っていく。


 あなたは朝食を先に食べることもなく待っていてくれる。


 あなたはそんな時間に身嗜みを整えて、教科書を開き予習をしている。



「できたわよ。朝食を食べましょう」



 そんな風に声をかけると教科書を閉じ、朝食の準備を手伝ってくれる。



「「ごちそうさまでした」」



 私の分の食器もまとめて持って行き、洗ってくれる。


 私はそんなあなたを眺めて幸せを感じる。



「そろそろ行くか」



 2人でソファに座りまったりしていると、あなたは時計を確認してそう言った。



「そうね。お母さん、行ってきます」


「行ってきます」



 今日も手を繋いで、学校までの徒歩20分の道をゆっくり歩いて行く。



「部活動、どうしましょうか」


「入らなくて良いならあまり入りたくないんだけどな」


「そんなこと言っても、何処かには所属しないといけないわよ」


「ならほとんど活動してないとこに入部して、幽霊部員にでもなろうか」


「そうね。それが良いわ」



 あなたと話していると、すぐに学校に着いてしまう。


 2人で教室に入ると、なんだかテンションの高い生徒が挨拶をしてくる。


 社交的なあなたはしっかりと挨拶を返し、私はそっと会釈をした。


 鞄を机に置いてあなたの席へ行くと、あなたは前の席の生徒と挨拶を交わしている。


 私はなんだか寂しくなって、あなたの膝の上に座ってしまった。


 周りの目も気にせずに、お腹に手を回して支えてくれるあなたが好き。



「そろそろ時間だよ、席に戻りな?」



 そう声をかけてくるあなた。


 あなたの温もりを惜しんでいると、そっと頭を撫でてくれる。


 私は一瞬だけあなたに体重を預けて立ち上がり、席に戻った。


 あなたに負けたくなくてしている勉強のおかげで、授業はほとんどが復習のようなもの。


 自分がきちんと理解し記憶しているかを確認していく。


 そんな確認作業な授業を数回こなすと、あなたとのお昼ご飯の時間になった。



「食べましょう?」



 お母さんに手伝ってもらいながら私が作ったお弁当。


 あなたが美味しそうに食べてくれてとても嬉しい。


 食事中、近くの席の女子生徒がなにかを言って、それにあなたが対応する。


 そんなやりとりがなければもっと良かったのにと思ってしまうのは、良くないのだろうか。


 あなたはすぐに私のそんな気持ちに気が付き、頭を撫でてくれる。


 なんでか、泣きそうになってしまった。



「「ごちそうさま」」



 食べ終えたお弁当箱を回収して鞄にしまい、またあなたの席へ行く。

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