第3話

 あなたと一緒に学校へ向かう。



「あなたと一緒のクラスで嬉しいわ」


「俺も嬉しいよ」


「新入生代表は譲ることになったけど、次は負けないわ」


「次も勝てるように頑張るよ」



 中学生の頃は常に一位と二位を競い合っていた。


 お互いがお互いの恥とならないよう、努力を重ねている。



「ねえ」


「なんだ?」


「ずっと一緒よ?」


「そうだな。好きだぞ」



 嬉しくなって、腕に抱きついてしまった。


 歩きづらいだろうなんて言いながら受け入れてくれるあなた。



「もうすぐ学校に着いてしまうわ」


「そうだな。そろそろ離れような」


「そんなに離れて欲しいのかしら?」


「別に俺はいいけど、目立つぞ?」



 仕方なく腕から手を離し、手を繋いで歩く。


 自然と歩幅を合わせてくれて、それとなく車道側を歩いてくれる。


 周りの目なんかよりも私を優先してくれるあなたが好き。


 学校に着いても手は離さない。


 そんなことはないとわかっていても、あなたが他の女に取られるかもしれない、そんな不安を抱いてしまう。



「大丈夫だよ」



 こちらを見もせずそう言ってくれるあなた。


 その一言でどれだけ私が安心するか。



「ありがとう」



 そう返すと何も言わずに微笑んでくれる。


 教室に着くと、名残惜しいが手を離す。


 席が離れている為しょうがない。


 私にもあなたにも、同級生は話しかけてくる。


 どうでもいい話題、どうでもいいアピール。


 本当に、退屈だ。



「一緒に食べましょう?」


「ああ」



 昼休みになり、どうでもいい相手に声をかけられる前に、あなたのもとへ行く。


 量は違っても同じ中身のお弁当に、ささやかな幸せを感じた。


 私の好きなもの、あなたの好きなもの、バランスよく詰められた食材を、2人で食べていく。



「「ごちそうさま」」



 食べるペースまで私に合わせてくれるあなた。


 午後の授業までのわずかな時間を、のんびりと過ごす。



「ねえ」


「ん?」


「今夜は私の家だからね」


「ああ、わかってるよ」



 昼休みが終わってしまう。


 早く放課後にならないかな。



「帰るわよ」


「ああ」



 放課後になった。


 あなたとの時間が惜しくて、急かすように声をかけてしまう。


 そんな内心はばればれで、優しく微笑みながら返事をくれた。


 手を繋いで2人で歩く。



「今夜のご飯はなにかしら」


「なんだろうね」


「和食が食べたいわ」


「焼き魚とか、いいね」



 たわいのない会話、それが幸せを感じる。



「週末は私が作るから、楽しみにしていてね?」


「ああ、それは楽しみだな」



 私の家にはあなたの着替えが、あなたの家には私の着替えがある。


 そのまま私の家に一緒に帰り、2人で過ごす。



「学校、疲れたわ」


「人付き合い苦手だもんな」



 膝の上に乗り抱き付くと、抱き返して撫でてくれる。



「ずっとこうしていたいの」


「ダメになっちゃうな」


「あなたがいればそれで良いもの」


「社交性が無いと、大変だぞ?」


「正論はいらないわ」



 あなたの首に顔を埋め、目を閉じる。



「いつになったらあなたは私を抱いてくれるのかしら」


「毎日抱いているだろ?」


「わかってるくせに」



 誤魔化すように笑うあなた。


 不貞腐れる私を子供扱いするあなた。


 どんな私でも受け入れてくれるあなたが、好き。

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