第2話

「なにをしてるんだ?」


「あなたの寝顔を見ていたのよ」


「そうか、おはよう」


「ええ、おはよう。今日もいい天気よ」


「それは良かった。今は何時だ?」


「朝の5時ね。まだ2時間くらいは、寝ていられるわよ」


「何時から起きてたんだ?」


「4時前かしら。目が覚めちゃって、あなたの寝顔を見ていたの」



 仰向けに寝るあなたに跨り、お互いの吐息がかかるほどの距離であなたを見ていると、時間がすぐに過ぎていってしまう。

 寝顔も好きだけど、私をじっと見つめてくれるから、起きている時の方が好き。



「なあ、どいてくれないか?」


「嫌よ、後2時間はこうしているわ」


「そうか、ならしょうがないな」



 そう言って私の腰を掴み、軽々と持ち上げて私をベッドに転がした。



「こんな雑に扱うなんて酷いわ。責任取ってもらうわよ」


「それは高校を卒業してからな。俺はトイレに行ってくる」



 ベッドから起き出し、部屋を出て行ってしまうあなた。


 あなたの枕に顔を埋め、あなたの匂いに包まれる。



「なにをしてるんだ?」


「あなたがいないから枕を抱いてあなたを感じているのよ。早く来てくれないかしら?あなたじゃないと物足りないわ」


「はいはい、ほら、少し詰めて」



 ベッドに入り直すあなた、優しく抱き寄せ私を包んでくれる。


 あなたの体温、あなたの匂い、少しごつごつした体、全部が好き。



「ねえ、好きよ」


「俺もだよ」


「もっと強く抱きしめてくれない?」


「これで良いか?」



 あなたの首元に顔を埋め、全身が密着し、一つになるような感覚。


 2人だけの時間、2人だけの空間、ずっとこうしていたい。



「少し寝るわ」


「うん、おやすみなさい」



 あなたの心音と、とんとんと背中を叩かれる心地良いリズムに、すぐに眠りに落ちてしまった。



 ーーー



「んう...」



 好きな匂い、すりすりと体を擦り付け、さらに密着する。



「そろそろ起きる時間だぞ」



 近いところか遠いところか、あなたの声が聞こえてきた。


 声に導かれるように瞼を開けると、目の前にはあなたの顔。


 じっとこちらを見つめ、もう一度同じように声をかけてくるあなた。



「ずっとこうしてたいわ」


「俺もだよ」



 くすりと微笑み、私を抱きしめ撫でてくれる。



「でも残念。もう7時だ」


「それは、起きないといけないわね」



 そう言っても、体がこの心地良い空間を手放そうとしない。


 あなたは手慣れた様子で、私を抱いたまま体を起こした。


 身長差があるとは言え、軽々と私を抱き上げ、起き出してしまう。



「自分で歩いてくれないか?重たいぞ」


「乙女に重たいだなんて、酷いわ」



 そんなことを言われても、あなたの温もりを手放せない。

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