第18話 吐露
自分の部屋に戻ってきてからも、
シオンは先ほど聞いたカペラの話を反芻してしまう。
シリウスの母が先代の聖女だった。
カノンという名前の響きから日本人だったのではと想像する。
それならばなおのこと生きていて欲しかった、という本音をこぼしそうになったが、
自分以上にシリウスやカペラ達がどれだけ思ったことか、と自分を律した。
偉大な先代の存在はプレッシャーにも似ていて、
自分がカノンの代わりになれるはずもないと思うが、
親切にしてくれた彼らの優しさに報いたい心は揺るがない。
出来ることをやるだけ、それは分かっている。
全身に鉛のようなものがものがのしかかってくるような感覚に襲われる。
ベガを助けたい気持ちに嘘はない。
しかし、回復を望んでいなかったベガの気持ちを無視していいのか、
カペラはベガの回復を願ってはいたが、
この変化で彼らの関係は壊れてしまわないか、
当人たちの本心はどこにあるのだろう。
それに彼女の魔傷を治せば、
シリウスの婚約者としての立場は揺るがないものになる。
「やっぱり、ベガ様とお話がしたいわ」
シオンはじくじくと鈍く広がる胸の痛みに気づかない振りをして、眠りについた。
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翌日、シオンたちは神官たちの悲鳴を聞いて目を覚ます。
神殿に座すはずの奇石は、神官ギナンと共に行方が分からなくなっていた。
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