第15話 カノン
中央神殿に向かっている途中、
魔物退治に奮闘しているシリウスとカペラに遭遇する。
護衛を申し出てくれたが、ベガは気まずくて顔が見られなかった。
しかしシリウスとカペラのおかげで、
進路が開け、想定より早く中央神殿に到着した。
「奇石を台座に戻して結界を張りなおすわ」
「援護します。カペラはベガを頼む」
「はい!」
ベガは頼もしい親子をただ見つめることしか出来ない。
カペラはベガを守りながら魔物と戦う。
カチと音が鳴り、奇石が元あった場所に戻る。
カノンは強烈な神聖力を放ち、光が広がり、
神殿を包む結界が少しずつ修復されていく。
下級の魔物から徐々に消滅し、上級の魔物も動きが鈍くなっている。
だから油断していた。
結界の修復に集中しているカノンの後ろから、魔物の影が近づく。
カノンに迫る魔物に気づいた瞬間、駆け出すベガ。
「カノン様!」
集中するカノンには声が届かない。
(嫌。これ以上誰も傷ついてほしくない)
「カノン様‼ 危ない……!」
「母様、後ろ……!」
カノンに飛びつくベガ。
と同時に魔物が二人を襲う。
一拍遅れてカペラが向かうも間に合わない。
「カペラ様! ベガ様!」
「母様! ベガ!」
どさりとその場に倒れ込む2人と魔物。
完全に修復された結界の力で、魔物は消滅する。
2人の背中に大きな傷を残して。
「カペラ様! ベガ様!」
「母様! ベガ!」
懸命に名前を呼ぶも、どくどくと床に広がる血が止まらない。
ベガは完全に気を失っている。
「シリウス、カペラ……」
「母様!」
「カノン様!」
カノンが震える声で呼びかけ、応えるシリウスとカペラ。
「ベガと一緒にいたことは、内緒にしてほしいの。
この子は何もしていない。私に危険を知らせてくれただけなの」
「でも」
シリウスの手を握り、なだめるように肩をさする。
「シリウス、お願い」
「……わかりました」
「ありがとう」
「母様……」
「シリウス。父様のこと、支えてあげてね」
「母様……?」
「愛してるわ」
シリウスに微笑んで、カノンは意識を失う。
国王は王城の医者をかき集めて手を尽くしたが、
この時の傷が原因でカノンは寝たきりになり、
そのまま一度も目を覚ますことなく命を落とした。
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