第14話 10年前

本日休業の看板が下げられているカフェ。

ソファーに座り、一枚の写真を見つめているベガ。


「カノン様……」


幼い頃のシリウスとベガ、シリウスの母であるカノンが映っていた。

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10年前、ベガは父とともにシリウスの誕生パーティーに参加した。

中央神殿に勤めている叔父も参加しており、

そこで父と叔父の企みを聞いてしまう。


「ダンスの混雑に乗じて、中央神殿に向かいましょう。

 流石の聖女様も息子の誕生パーティーでは油断するはずです」

「やはり奇石を奪うなら今日しかないな」

「では兄上また後で」

「ああ、念のため軽く仕掛けをしておこう」


父がカノン様に対し攪乱魔法術式を使用した。

シリウスのお祝いに気が緩んでいたのだろう、カノン様に術式が付与された。


父と別れた後、食事中やカペラ達と会話をしている時、

シリウスとのダンス中も、先ほどの父達の会話がこびりついて離れない。

胸騒ぎがして仕方なかった。

気が付けば、お祝いの言葉もそこそこに、中央神殿に向かっていた。


ベガは台座にはめられた奇石を取り出し、胸元に隠す。

外してはいけないと知らなかった。

奇石は魔力を吸い寄せる。

その危険性から、聖女以外触ってはいけないものとされていた。

奇石はじわじわとベガの魔力を奪っていく。


奇石を失った中央神殿は結界が弱まり、あっという間に瘴気が王城を包んだ。

パーティー会場では、瘴気に呼び寄せられた魔物達が次々と参加者を攻撃していく。


ベガは父達に奇石を渡したくない一心で、カノンの元へと懸命に走った。


「カノン様!」

「ベガ! 無事で良かったわ」

「あの、これ」

「奇石…! どうしたの」

「父様が、これを盗もうとしていたんです。それで、隠さなきゃいけないと思って」

「ベガ……貴女の魔力が……」

「ごめんなさい、こんな方法しか思いつかなくて。

 私のせいで、皆さんが……怪我を……」


魔力消耗が激しく、呼吸が浅くなるベガ。

父の悪行を防ぎたかっただけだった。

方法を間違い、沢山の人を傷つけた。

申し訳ないと思いつつ、目の前の聖女にすがりついてしまう。


「ベガ、落ち着いて」


ベガを抱き締めるカノン。

温かさに涙が止まらなくなる。


「……助けて、カノン様」

「うん。任せて」

「……ごめんなさい……」

「大丈夫よ。一緒に結界を直しに行きましょう」

「はい……!」


奇石をカノンに預け、支えられながら神殿に向かった。

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