第12話 ノトス

「遠いところありがとうございます。聖女様」

「歓迎感謝します。神官様」


王都の南方、ノトスという町にある神殿。

シオンとリゲルはこの神殿の結界を補強するために訪れていた。

なぜかカペラも一緒に。


「カペラ様もご健勝のようで何よりです」

「久しいな、ギナン」


ギナン、と呼ばれた神官は40代くらいの男性で優しい雰囲気が漂っている。

会話に昔馴染みと思わせる親しさが滲んでいた。


「近頃の王城でのご活躍、ここノトスにまで轟いております」

「世辞はよせ」

「本当のことですから。なにせ、第二王子の」

「ギナン。聖女様はお疲れだ。早く部屋に案内を」

「……! はい」

「お世話になります」


ギナンの案内で、シオン達は廊下を歩く。

道すがら、絵画や石像、庭園のそばを通ったが、

どこも丁寧に手入れがされていて、彼らの信心深さを表しているようだった。


シオンの部屋と廊下を挟んだ向かいにリゲルの部屋。

隣にカペラの部屋が用意されている。

何かあってはダメだから、という護衛の意味も含めてなのだが

先日の一件以来、きちんと顔を合わせていなかった為、シオンは少し気まずい。


「では案内は以上になります。お食事はお部屋に運ばせますので

 それまでゆっくりお過ごしください。明朝、またお迎えに上がります」


ギナンは丁寧な礼をして去っていく。

最初の神殿がここで本当に良かった。

もっと雑な扱いをされていたら、心が折れていたかもしれないと

ギナンへの感謝を募らせるシオン。


「聖女様、お疲れ様でした。

 隣の部屋に控えておりますので、何かございましたらお呼びください」

「カペラ様のご迷惑でなければ」

「なんでしょう」

「お食事をご一緒していただきたいです」

「仰せの通りに。

 ただ、私が女性の部屋に入るのはよろしくないので、私の部屋に運びましょう。

 リゲルと一緒なら扉を閉めても大丈夫ですので」

「ありがとうございます!」

「では、夕食まで少々時間がありますし、私は書類仕事に戻ります。

 用意が出来たらお声がけしますね」

「お忙しいのにすみません。また後ほど」

「ええ、楽しみにしています」

「私もです!」


カペラに聞きたいことがあった。

不信に思われないよう場を作るつもりが

思い切り気を遣われてしまったけれど。

(でも……1人で食べるより、皆で食べた方が楽しいものね)


分かれ際、カペラの表情が曇ったことにシオンは気づかなかった。



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