第10話 ベガ

美女の登場に当然シオンは固まってしまう。

それもそのはず、イケメン×2+美女だけで視界が渋滞していたのに

ツンデレ系儚げ美少女まで追加されてしまったのだ。


(私以外の顔面偏差値の高さに酔ってしまう)


あっけにとられているシオンを横目に、

カペラとリゲルはその少女に近づき挨拶をする。


「シリウスに振り回されて、同情するわ」

「ご無沙汰しております、ベガ様」

「お変わりないようで、安心しました」

「皮肉だとしても会えて嬉しいわ、カペラ」

「すみません……」


(どういうこと? 皆ベガさんと知り合いなの?)


「ところで、そちらの女性はどなたですの?」


ふいに美少女の目が自分に向き、どきりとしてしまうシオン。


「えっと、私は……」

「聖女のシオンだよ」

「どういうことなの……?」

「少しでも、助けになればと」

「余計なことはしないでいいわ!」


ベガに噛みつかれ、カペラは何も言えなくなる。

その様子をシリウスは静かに眺めていた。

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静かな店内に心地よいオルゴールと紅茶を入れる音が響く。

1分蒸らしてから注ぐとより美味しいんですよ、とベガは丁寧に教えてくれる。

シオンは先ほどからの空気を破れず、案内されるまま席に着き、

用意されたお茶を口に運ぶことしか出来なかった。


「美味しい」

「でしょ! 東方から取り寄せたのよ!」


ゼロ距離で美少女に微笑まれて、またしても固まるシオン。

代わりにシリウスが答える。


「絶妙な香ばしさがあるね」

「そ……うですね」

「聖女様、どうして私とは話してくださらないの?」


リゲルはもどかしい雰囲気に一石を投じる。


「カペラ様、本題に入られては?」


神妙な面持ちを崩さないまま、カペラは口を開いた。


「……そうだな」


視線がカペラに集中する。

ベガの声色のトーンが先ほどより一段下がる。


「本題?」

「ベガ様、貴女に魔傷の治療を受けていただきたいのです」

「…………は?」



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