第3話 侍女

「お目覚めになりましたか?」


目を覚ますとそこは、知らない天井だった。

声をかけてくれた方に視線を移す。


(うん、この人も安定に美人だわ。

この世界美形しかいないみたい)


「貴女は……?」

「私はリゲルと申します。

 貴女様の身の周りのお世話を任されました」

「私はどのくらい気を失っていましたか?」

「聖女様は半日ほど眠られたままでした」

「リゲルさん、私のことはシオンと呼んでください」


リゲルは困ったような微笑みを浮かべる。


「ではシオン様と。それと私に敬語は不要です」

「すみません、気をつけま…気をつけるわ」

「随分うなされていましたがお体は大丈夫ですか?」

「え?ええ…。私、何か言っていた?」

「どなたかのお名前を」

「そう…教えてくれてありがとう」


(今の私は生きているとはいえ、あちらの世界にはもういないんだ。

お父さん、お母さん、親不孝な娘でごめんなさい)


家族を思い出して落ち込んで暗くなるシオンに、リゲルは優しく提案する。


「お風呂の準備ができております。いかがでしょうか?」

「とってもいいアイデアだわ」

「ではお手伝いいたしますね」

「お手伝い?」


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用意された風呂はシオンが見たこともないような豪華さだった。

湯舟にはバラが浮かべられていて、なんだか落ち着かなかったが、

次第に心と体がほぐれていく。


(お風呂好きは日本人の性なのかなぁ)


「気持ちいい」

「いつでもお手伝いしますのでお声かけくださいね」

「大丈夫!」


異世界令嬢あるある、

【一人でお風呂に入らない】を発動されそうになってシオンは必死に止める。

超絶スタイルの悪役令嬢に転生するならまだしも、

一般人としてそのまま召喚された自分が美人侍女に裸を晒して良い訳がない。

お世話は入る前に丁重にお断りしていた。


(まさか外で控えているなんて…!

おもてなし精神がすごすぎるわよ、リゲルさん!)


「しかし、お寛ぎのところ申し訳ないのですがご報告が」

「どうしたの?」

「シリウス様があと一時間でいらっしゃるようです」

「なんですって……!?」


(正直、もう少しゆっくりお風呂に入りたかったなあ)







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