胸の高まる日
体を突き刺してくるような日差しが今日も厳しい。念入りに日焼け止めを塗って外に出ても、暑くて汗が噴き出る。
今日の集合場所は今年から学校がある日は毎日電車に揺られてくる芽蒙高校や杏西高校のある
僕と護と渡は木零市の隣の
駅の改札を通り、ロビーを離れた途端涼しかった駅が偉大だと思い出させるほどの熱が僕らを襲った。そしてそんな暑い外の世界に随分と久しぶりな人影が見えた。
「悠人くん!待った?」
「お、きたきた。集合時間ぴったりだな。俺らは早く来ただけだから、気にすんな」
悠人くんの方に駆けつけた。悠人くんの隣には一人初めましての男がいた。背は僕より少し小さいくらいで清潔感もあるし、顔は失礼かもしれないけど少し幼い気がして、目もパッチリしていて可愛い。なんていうか、美少年だ。
うっかりマジマジと見過ぎてしまった。少し不審がられた後、ようやく彼は口を開いた。
「初めまして。俺は
「あ、初めまして。香取伊月です」
「伊月くんね、悠人から話は聞いてる。伊月って呼んでいい?」
「あ、うん!全然大丈夫だよ」
悠人くんの友達だぁ〜!もう陽キャオーラが……、すごい。
「大丈夫?」
「あー、すみません。こいつ結構人見知りなとこあるんで」
「そうなんだね」
「俺は日々木護です。よろしく」
「よろしく……って、え!デカくない?なんぼあるの!?」
「あぁえっと、今は186cmあります」
「すげぇ……」
「すごいだろケン!俺も最初びびった」
「やばいな」
護と謙夜くんが話している時、渡は僕の後ろに隠れていた。今日渡はコンタクトを外しているから、やっぱり少し怖いんだろう。
「渡、ごめんね?でも多分いい人だよ」
「うん。わかってる。でもやっぱり初めての人に見せるのは怖くてさ」
そう言って渡は
「あの〜初めまして。お、俺は星野渡、です。よろしく」
「うん。よろしく……、目隠してどうしたの?人見知りなのかな」
「あ、渡今日コンタクト無しなの!?」
「ユウどゆこと?」
ユウ!?そういえばさっき悠人くんも彼のことをケンって呼んでいたから、本当に仲がいいんだな。羨ましいな。
「コンタクトないとなんかまずいの?」
「あ、えっとなんもまずくない……、見せるね?」
「あ、いや別に無理しなくても。なんか息上がってない?水飲むか?」
「大丈夫!ほら」
渡は顔を上げて謙夜くんと目を合わせた。前を向く渡の右の瞳は、青と緑の2種類の色が交ざっていた。
「俺さ、生まれた時からこの目でさ、なんか先祖帰り?ってやつみたいで俺の目はみんなより変でさ、小さい頃はみんなから避けられてたし、怖がられてたからさ!俺、怖くて……、普段は黒のコンタクト入れて偽ってるんだけど、悠人の友達だし、俺もこれから仲良くしていきたいと思ったから、ちゃんと、知ってもらいたく…て、、」
「渡!」
護は興奮して震える渡の肩をガシッと掴んで落ち着かせた。
渡は小さい頃からこの目が原因で周りから不気味がられて、そしていじめられていた。
普段は誰よりも明るく振る舞っているけど、本当は誰よりも自分の見せていない部分を知られるのが怖い。僕の恋路のために渡の秘密を晒すのも本当が気が引けて仕方がなかったけど、渡は自らやろうとしたから止めなかった。悠人くんは同じ高校だからってのもあって、今日ほど怯えなかったけど、やっぱり他校は怖い。
護に支えられている渡の震えた弱音を聞いている謙夜くんの真っ直ぐな渡に対しての視線が、僕もなんだか怖くなってきた。
すると不意に彼は渡の近づき言った。
「綺麗じゃん」
「ふぇ……」
「渡くん、だよね?俺は君の目、めっちゃ好きだよ。綺麗だと思う」
「あ、ありがとう」
「そいつらはさ、センスが無いんだよ。こんな綺麗な目が似合う人なんて、そうそういないよ。もっとさ、自信持っていいよ。って、トラウマの前には自信なんて弱くなるのか。約束する。俺は渡くんの目を怖がらない」
その言葉に宝石のようなその目は潤み、揺れた。
「本当に、ありがとう。なんか、胸がスッとなった……」
「渡、謙夜のこと、信頼してくれよな。俺みたいに名前で呼んでやってくれ」
「うん!よろしく、謙夜」
「おう。よろしくな渡……っ!悪い、目、もうちょっと近くで見ていいか?」
「?別にいいけど」
渡がそう答えると彼は渡の顔に急接近して、じっと目を見つめた。渡は急な行動に固まってオドオドとしている。
「ああ、本当に綺麗だな」
「ど、、どうも〜」
やっぱり陽キャは恐ろしいな。無自覚に距離を詰めてくる感じは、悠人くんと同じだな。僕にやられなくてよかったな……。
「おいおい離れろってケン、渡が困ってる」
「悪い」
「あ、てかみんな、そろそろ行かないと!チケット取れないよ」
「そうだな。急ごうぜ」
僕らは暑い世界の下を歩き出した。守道謙夜くん、まだよく知らない彼だけど、でも彼なら、悠人くんのいい理解者になる。僕らとも友好な関係を築ければいいな。
告白がこく一刻と近づいてくると考えると時間が過ぎるのが早い。ジリジリと暑い日差しとは対極的な緊張感で熱中症になりそうだ。
僕らはバスに乗り込んだ。涼しいバスで、僕は悠人くんと隣に座った。
あぁ、爆発しそうだな。
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