2編 掴みたい!

勝負の前日

 校長先生の長い話が終わって、僕らは長い休みに解き放たれた。

 それももう二週間と四日前のことで、今日は8月12日の土曜日。明日は安定の護と渡、そして本命の悠人くん。あと、悠人くんの友達と一緒に映画を見に行く日だ。

 そして、そう。僕が悠人くんに想いを伝える日だ。僕は明日、彼に好きだと伝える。どんな結果になるかは、僕には見当もつかない。普通に考えて振られるのが妥当だけど、僕は信じたい。この手で、悠人くんを掴みたい。だから明日は2人に協力してもらって、できるだけ悠人くんの近くにいるつもりだ。そうすれば、少しは意識してもらえるかな?

 どうして悠人くんの友達も一緒なのかというと、これは護が提案したことだ。同性に告白されるということは普通は無いことで、された側は実は結構ショックが強いもので、重いストレスがかかるらしい。

 また、もしも悠人くんが僕と付き合うことになったら、彼もまた普通とはズレた人間となってしまい、色んな苦悩が生まれてきてしまうことが予想される。だから、悠人くん自身が一番信頼できる友達にあらかじめ知って、認めてもらうことで、悠人くんの理解者としてその後の相談に乗れるようにと、これが護が言いかけたことだ。要は僕にとっての護と渡を、悠人くんにもいないといけないってことだ。

 悠人くんによると、明日一緒に遊ぶ人は芽蒙の人じゃなくて、杏西あんさい高校という私立校の生徒らしい。杏西高校は学力面では、ちょっと残念な高校だけど、部活動はとても活発で、過去に甲子園やインターハイ、コンクールなどで華々しい結果を残している強豪校だ。いかんせん人相の悪い人も多くて、悪い評判もしばしばある高校だから少し杏西の制服を着た生徒には近寄り難いが、悠人くんの信頼した友達のことだ、きっといい人に違いない。

 告白するのは、怖い。明日の集合は駅前に10時だ。目を合わせることができるかな。自然に歩けるかな、話せるかな。告白、成功するかな。

 怖くて怖くて、もう泣きそうだ。

 だけど、そんな時に僕には、助けてくれる友達がいたからここまで歩いてこれた。彼らのためにも僕は、前を向いて歩きたい。

 堂々と、幸せになるために。

 掴むんだ。明日は戦いで、悠人くんを掴むことで、僕らは勝つ。

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