好きな人

「伊月と、確か君は日々木……、護くんだったよね?」

「合ってる。すまん、俺は覚えきれてないから、名前を教えてほしい」

「一カ月目なんてそんなもんだろ。気にしないでくれ。俺は朝陽悠人です。よろしく護!」

「おう。悠人な、よろしく」

 いつのまにか隣のベンチに座っていた悠人くんと、僕の隣に座っている護が淡々とコミュニケーションを交わしてしる。護は僕とは違って人見知りはしないから、悠人くんとは相性がいい。僕が花壇の絵を描いている間、ずっと喋っている。

「え!護も美術部なんだ!バスケ部とかだと思っていたから意外だな」 

「中学校の頃もバスケ部とかバレー部と間違えれてたよ。俺運動苦手なんだけどな」

「間違えるのも無理ないだろ。護、前の身体測定で身長何センチだった?」

「185」

「えぐいな。なんで美術部に……、絵が好きなのか?それとも護もBLが好きなのか?」

「も?どういうこと?」

「土曜日に偶然デパートで伊月と遭遇してさ、そこでBLを教えてもらって、俺も一昨買ってみたんだ。なかなか面白かったんだ。護は伊月と仲良くて、もしかしたら共通点があるのかと思って聞いてみたんだけど、違ったかな?」

 護が僕のことをじっとみている。何やらかしたんだ?って感じで、護の知らない間に腐バレした僕、しかも自分からバラした僕をみている。

「ま、まあ俺もBLは好きだな。ただ、美術部に入った理由は、単に伊月と、A組の星野渡ってやつと一緒の部活に入りたかっただけ」

「仲良いんだな、伊月と、その渡?と」

「おう。小学校からの幼馴染なんだよ俺ら」

「うっわーいいなぁ!幼馴染で、ずっと一緒で、高校も一緒で、部活も一緒とか最高かよ!!」

「そんな羨ましいかな?朝陽はめっちゃ仲良いやついないのかよ」

「いる。けどこの学校じゃなくて、杏西なんだよな」

「杏西って、あぁ部活強い私立だよね」

「そいつも芽蒙受験したんだけど落ちちゃってさ。残念だけど、あっちでも部活入ったみたいだし応援するしかないよ。いいやつだからいつか紹介したいな」

 その友達も、めっちゃ話してる護も羨ましい。けど、護と悠人くんがどんどん仲良くなっているのを聞いていると嬉しい。ただそれは僕が集中して風景を描いている時じゃない方が良かった。僕ももっと仲良くなりたいんだよなぁ。

 自由時間残り30分の頃になって僕の絵は完成した。護と悠人くんが配慮してくれたおかげで集中はできたけど、すごく楽しそうだったから微妙な気分だ。まったく恋ってのはどうもいやらしい。

「伊月めっちゃ上手じゃん!」

「うん。集中した甲斐あったな」

「まあね。そっちはそっちで楽しそうだったね」

「おいおい、そんなムッとすんなよ、お前の友達とったわけじゃねえよ」

 もちろんそんなことわかってるけど、やっぱり僕も混ざりたかった。こんなことなら風景画なんて描いていなければよかったかもしれない。と思っていたけど。

「伊月、集中してる時の伊月めっちゃかっこよかったぞ。俺護と喋ってる間もずっと目が伊月にいっちゃってさ、めっちゃ応援してた」

 ……、反則。好きです。風景画描いてて良かった。

 悠人くんといると時間はあっという間だった。遠足の自由時間が終わりを告げた。

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