16.俺、『白獅子』辞めます

「俺、『白獅子』辞めます」



 我がギルドハウスにて他のパーティーメンバーに堂々と宣言した俺。を見る目の前の三人にため息を吐かれた。なして。



「俺、『白獅子』辞めます」


 とりあえずもう一度言ってみる。


「レオさん……。『白獅子』は称号であって職業じゃないから辞めるも何も無いって何度も言われたじゃないですか。王城にいらないって最初に言い出して乗り込んだ時……」

「ぐぬぬ……。無理矢理押し付けられて何の旨味もない……」

「『白獅子』授与の時に獅子騎士団の創設を拒否、近衛騎士団長待遇での招聘も拒否、神殿騎士団特別待遇での招聘も拒否。何もかんも断ってたらそら旨味なんか無いわな。あるとすれば王国内の色んな設備顔パスで行けるってところやろうけど」

「一切使ってないから意味がない」

「……せやんなあ」

「いらないってあんだけ言ったのに……」

「断れなかったもんねー」

「しゃーないやん。ほんま偶然『千年に一度での厄災』が現れて討伐したのめっちゃ大勢に見られたんやから」



 我が家でいつも通り寛いでたら、スズが急に「なんか嫌な予感がする」とか言い出して、皆不安そうだったから都市の外に出てスズが言った方向に歩いて行ったら、なんか召喚されたみたいに急に出現したアレ。ゴジラかと思ったわ。君世界観間違ってない? ってマジで思ったもん。いや異世界で巨大モンスターは全然間違ってないんだけど。



「ま、やらないと沢山人死んでたし」

「千年単位で現れて王国を滅ぼしていた伝説の魔物の初討伐でしたからね。千年王国と揶揄されていたこの国が永世国家と言われ出したんですから。レオさん凄いです」

「いやあれ完全にシルの付与魔導が凄かっただけだからね? スズが地の利を活かす戦術立ててマジクが足止め頑張ってくれたからだからね?」

「うち、あの辺が広くて戦い易いって言っただけやからな? 城よりデカい魔物相手に一人で前衛張って倒したやつがようゆうわ」

「王都を吹き飛ばす威力のブレスを身体一つで受け止めるのは付与があるないの問題を超えてますよ……」

「沈めようにも魔力結界張られてほとんど足止め出来なかったよ?」

「いやあのブレスは受け止めなかったらこの街吹き飛んでたしさ……。っていうかぶっちゃけロサリアさんのほうが強かったし」



 これは事実。人間であるロサリアさんのほうが強かった。多分最高火力であったブレスもロサリアさんの聖剣技最高峰のスキルのほうが火力あった。ロサリアさんのスキルならブレスも防げる手筈あるだろうし……。やっぱマジで化け物なんだよなロサリアさん。……っていうかアレ、これが物語ならロサリアさんが倒して英雄になるイベントだったろって今でも思ってる。



「で、なんでそんな事また言い出したん?」

「この前のシルが攫われた件でさ」

「『四罪』の残党の件ですね……」

「あれほんとに『四罪』の残党だったのかなって」

「へえ……。なんでそう思ったん?」

「んー、勘かな?」

「レオっち、そういう勘は割と当たるからな」

「いやね、アイツらの剣が上品だったんだよ」

「剣に品があるのー?」

「喧嘩慣れってか、室内戦闘慣れしてない奴ばっかりだったし」

「場慣れしてない?」

「そ。賊ならもっと雑に喧嘩だろ。わざわざ構えてスキル使ってさ。広い闘技場じゃないってのに。そりゃスキルは強いけど。……あれさ、騎士か騎士崩れだったんじゃないかなって」



 皆が皆、室内戦闘でわざわざ上段に構えてからスキル使おうとする奴ばっかりだった。闘技場じゃないっつーの。天井に刺さって抜けない……なんて事はスキル使えばないけど、いやまあ天井ごと斬り裂けるだろうけど、わざわざそんな選択肢選ぶ必要が無さそうな連中。そのスキルしか使えないならまだしも、どいつもこいつも上級スキル持ち。魔導使いに至っては地下で多分アレ炎系魔導放とうとしやがったし。窒息して自滅する気かっての。



「……きな臭いなあ」



 俺の話を聞いたスズが何やら考える。ぶっちゃけ知ってる事話したらスズに考えるのは丸投げしたほうが大体上手くいくので俺、考えるのやめます。



「だからしばらく国外に出ます! 『白獅子』しばらく中止!」

「ああ、そういう事ね。ならウチはやる事いろいろありそうやからあとで合流するわ。マジク、手伝ってくれへん?」

「いいよ!」

「え、ええと私は……」

「シルはレオっちと一緒な」

「そうだぞシル! 俺、シルがいないと無能だぞ!」

「(レオっちはどっちかと言うとウチらの誰かが一緒におるほうがただの脳筋になるけどな)らしいで?」

「わ、分かりました! で、国外って何処に?」

「隣国、ホーチェストナッツ! 理由は無い!」

「ま、ええちゃう? あそこいまゴタゴタしとるらしいから適当に紛れ込むにはちょうどええやろ。どうせなら観光でも兼ねてあっこの主都で合流する?」



 と、言うわけでなんやかんや話をした後、俺達は一旦このホスグルブ王国を離れ、隣国ホーチェストナッツに向かう事になった。しばらく離れるんで! って一応冒険者ギルドに行き先は告げずに連絡だけしといた。ま、魔族の領土に出掛けたり龍神王の所に出掛けたりとか割としてるんでしばらく国から離れるのは良くあるから問題はないだろう。


 というわけでとりあえず、目指せ主都『ウツノミヤ』!

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