第7話 戦闘

 ミカエルが呟くように王宮の高官であり軍隊長であるレダに聞く、

「レダ。大軍の先頭にいるのは隊長のデナルか?」

「そうです。そして、遙か後ろに見える金色の鎧を纏った男がネグロス・ゼノビア将軍です。そして、その隣にいるのが副将軍ガルデです。この国グランド・ゼノビアは武器は様々ですが、金色の盾が彼らの象徴です」


「あれが将軍か」

「ミカエル様、ネグロス将軍が戦場に……将軍が戦場に来ているのです。国王自らが直々じきじきに戦場に赴いているのです。冷やかしではありません。我が国を滅ぼしに来ているのです」


 黒のローブに身を包んだ少女シェーラがミカエルに視線を送る。

「こわければ帰ってもいいんだぞ。王宮で戸締りして震えてろ。ぼっちゃん」


「おまえはこわくないのか? シェーラ」

 ミカエルの問いかけにシェーラの口元がわずかに微笑みをたたえる。


 シェーラとミカエルが口元を黒いスカーフのような布で覆う。そしてローブのフードのようなものを頭にかぶる。

 まったく二人の表情がわからない。


 全身黒……

「『黒い悪魔』か……」

 僕の頭にそんな言葉が過った。


 ミカエルがシェーラに言う。

「『闇』に捕らわれるなよ」

「おまえもな」

 シェーラがミカエルに微笑み返す。


 ミカエルが微笑みながら言う。

「一人も殺さずに、先にネグロスに辿り着いた方が勝ちだ。金の盾が、この軍の象徴か……全兵士の盾を地に落とす」


 シェーラがわずかに微笑みながら言う。

「ネグロスのところまでだな。いい度胸だな。ぼっちゃん」


「ああ、ぼっちゃんは無鉄砲なんだ……シェーラ、死ぬなよ」


「ああ……ミカエルも……」


 言葉が終わる前に、ミカエルとシェーラは大軍に向かって馬を走らせた。


「無謀な。援護を」

 レダと周りの兵士が声を上げた。


「待て。少し様子を見ろ」

 王が静かに言った。


「しかし、お二人が……」

「よいのだ。お前たち兵士が動けば、敵がこちらの動きに気付く……」

「え……」

「あの数が、三万の兵が一斉に攻めてきたら、それこそ手の打ちようがなくなる」

「は」

「動くな……」

「はい」

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