第3話 ミカエルとシェーラ

~~ 『黒の国』 現在 ~~


 『黒の国』の王ルヴェイユ・ゲランは息子のミカエル・ゲランが周りの大人も恐れるほど不思議な力を持っていることに気が付いていた。


 そして、王宮の侍女の中にシェーラ・グリフという少女がおり、この少女もまた、不思議な力を使い気味悪がられていた。


 この少女はただの侍女ではなかった。王家の中において正統な血族ではないが、王の血を引く一族の少女だった。

 このことは王宮の中でも、王ルヴェイユと側近の一部の者のみが知ることであった。これについてはミカエルとシェーラ自身も知っていた。

 シェーラも身分は低いが王族の一人なのである。不思議な力は、その血筋からのものだった。

 ルヴェイユは、ミカエルとシェーラ、この二人が力を合わせれば、国を守れると確信していた。


 しかし、国の中にはシェーラに対する辛辣な批判の声も多かった。シェーラは彼女の母の身分が低かったことから、彼女自身も侍女という身分だった。

 それでも、さらに王宮の侍女にさえ、ふさわしくないと彼女をさげすむ者も多かった。

 幼いシェーラは自分を嫌う大人たちを理解できず、その不思議な力で危害を加えてしまうこともあった。そんなことが重なり、益々、彼女を差別的に扱う大人が増えてきた。



 そんな国内、王宮のいざこざとは関係なく、今まさに『黒の国』には大きな脅威が迫っていた。


 『北の平原』の先には多くの荒ぶる民族が跳梁跋扈ちょうりょうばっこしていた。

 それらの民族を従え、率いてきたのが、グランド・ゼノビア最強の王ネグロス・ゼノビア。

 そして、王ネグロスのもと、軍の隊長デナルが指揮をとり三万の兵を率いる大軍が『北の平原』に集結した。

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