ムーンフォレストのすべての国へ ～ 『黒の国』の記録（アズール・フィン）

第2話 悪魔が舞い降りた国

　このムーンフォレストの北の辺境。そこは『悪魔の棲（す）む場所』『鬼が巣（す）くう森』などと恐れられている場所である。その一帯はいつも戦乱が絶えず、近隣の国々からも恐れられ、疎（うと）まれていた。

　近づいてはいけない場所、近づいたら帰って来ることができない場所とも言われた。

　その地は『黒の国』

　このムーンフォレストの周りで、その地だけ、およそ百年にわたり戦乱の時代が続いていた。

　『黒の国』には、かつての王の血を引く一族が、二つの大きな勢力に分かれ国内で争っていた。

　一つはシエラエスト・ゲラン。

　もう一つはエルドネル・ゼノビア。

　このエルドネル・ゼノビアは国内で横暴を働き、戦いの末、シエラエスト・ゲランに追いやられる形で『黒の国』から追放され『北の平原』に逃げ延びた。

　ゼノビアは、その地の小国を支配下に置き、巨大な国家を作り上げた。

　その国家の名は『グランド・ゼノビア』

　この国はムーフォレストと周辺の国々の征服を企（くわだ）てていた。

　『グランド・ゼノビア』は世代を超え、およそ百年にわたり『黒の国』に度重（たびかさ）なる攻撃を仕掛けた。

◇

　そして、今……

　ついに王国『グランド・ゼノビア』は国王ネグロス・ゼノビアを頂点とした史上最強の国家となり、いよいよ『黒の国』さらには、ムーンフォレストと、その周りの国々を陥落（かんらく）させようとしていた。