第45話 東京へ?

 春奈ちゃんの家から帰ると、サーミャが出迎えてくれた。


「おかえりなさい。ミーナ様。一つ進言させていただきたいことがございます」


「ただいまサーミャ。進言って?」


 どうやら何か言いたいことがある様子。


「もうすぐ、悪魔たちの試練が始まるはずです。できるかぎり力を蓄えましょう」


「悪魔の試練?」


 それはなんだ? 悪魔といえば……名取さんのメイドのレイセさんとか、俺と春奈ちゃんが戦ったミザリーが思い当たる。


 ああ、あれは模擬悪魔とかいうなんだかよくわからん紛い物だったか。


「ええ、もうすぐ、さまざまなダンジョンから魔物が溢れ出します。世界中で同時に、大量にです」


「えっと、その情報はどこから?」


 模擬悪魔たちは試練試練とよく口にしていたから確かに信用できる話ではあるが、それをなぜサーミャ知っているのかは疑問が残る話である。


「私は悪魔憑きではありませんが個人的に付き合いのある悪魔がいるのです。そいつがこの地球に分体をよこしてきたので、事が判明した次第です」


 なるほど? 分体ってなんだ?


「分体……ですか」


「ええ、実際に見てもらったほうが早いかと。ロノウェ!」


「おいらをおよびか?」


 虚空からマスコットキャラのような姿をした黒くてふわふわな何かが出現した。


「か、かわいい」


「ん? おいらがかわいいって? そいつはありがとなお嬢さん! おいらはロノウェ。悪魔の侯爵さ!」


 こいつがサーミャと交流のある悪魔……。か、かわいいじゃないか。


「こいつ曰く、もうすぐ試練の時だから、知り合いには用意させておけと」


「特にあんただよお嬢さん。七美徳スキルを3つも宿しているんだから、人類の希望になってくれなきゃ困るぜ」


 人類の希望になる、ね。この俺が?


「人類の希望には、紅さんや、名取さんの方がふさわしいのでは?」


「紅? ああ、王の付き人か。あいつはとどめの楔だ、天使との闘いでは絶対に創造神の元にたどり着かせる必要がある護衛対象さ。あと、人類の希望が1人なんてしょっぱいことは言わねぇさ。名取ってやつも、そうなってくれると期待してる。ただお嬢さんが一番才能があるから、お嬢さんにはそうなってくれねぇと困るって話だ」


 なるほど? 初見の情報が多すぎてわけがわからないが、まとめると、紅さんは、もうすでに天使たちに対する決定打の役割がある。人類の希望とはおそらく悪魔が付いた者のことで、何人いてもよいと。それで、貴重なスキルを多く持っている俺が悪魔憑きになってくれないと、困ると。そういう話か。


 悪魔が憑く人を選ぶのが、今回の試練というわけか。


 思ったんだが、悪魔が人間に憑くことのメリットってなんなんだ?


「話は理解しましたが……悪魔が憑く人を選ぶ理由ってなんなんですか?」


「天使には悪魔に対しての浄化作用があるんだよ。おいらたち本体は天使に触れると消滅しちまう。でも何かに憑いておけば問題なく力を行使できる。まぁ、悪魔側が主導権を握ると消滅しちまうから、憑かれてるやつが主導権を握らないといけないんだけどな」


 なるほど? それで悪魔は憑く対象を探しているのか。レイセさんから話は聞いていたが、天使は本格的に世界を滅ぼそうとしてるんだな……。


「さて、おいらは分体なんでね。あんま出てられる時間は長くないんだ。いったんお暇するぜ。またな!」


 あら、かわいい悪魔ことロノウェが帰ってしまった。


「と、いうわけです。私からの提案は東京の大迷宮に挑んで、レベルを上げるというものです」


「なるほど、それはいい考えだね。そしたらお姉ちゃんにはなして東京に行く用意をしよう」


 東京大迷宮か。昔は断念したけど、今なら結構いけそうな気がするな。

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