第39話 日本初心者
あれからしばらくたって。俺が連れて帰って来た吸血鬼、サーミャは日本語を憶え、俺以外の人ともコミュニケーションをとれるようになったり、日本での生活に慣れてきていた。
そういえば、あの時ついていた配信がすごくバズっていたらしく、セントラルライトの配信者の登録者が全体的に大きく増えた。最後に、サーミャが俺に跪いたりしたところも映っていたから、マッチポンプだと疑う陰謀論者のような奴もいたが、特に取り上げられることなく鎮静化していった。
最近ネットのスルー力が上がっている気がして、少し関心した。
今日は日本初心者のサーミャを連れて、春奈ちゃんに服を見てもらったり、ラーメンなどのご飯を食べにいこうと思う。先ほど春奈ちゃんが迎えに来てくれたので、今は駅まで歩き中だ。
「しかし、今のサーミャさん、落ち着きすぎというか、魔力の圧がないというか。あの時の魔力の圧のイメージが付きすぎましたかね」
「今、私は魔力を抑えておりますから。昔から魔力を開放すると怖がられることもあったので」
元いた国の話とかもサーミャから聞いたことがあるが、そこでもサーミャは怖がられたことがあるらしい。というか話を聞く限り、サーミャはどうも異世界からこちらの世界にいつの間にか転移していたっぽいんだよな。
異世界転移の逆バージョンというわけだ。どういう原理でそれが起きたのかは不明だが、もしかすると今後もこういうことが起きるかもしれないな。対策を講じろと言われても難しい話ではあるが。
ま、難しい話は他の人にでも任せておこう。今は俺たち、3人でお出かけタイムなんだから。
「実際、私魔力の圧でやられちゃって。あんまりあの時の記憶がないです」
「魔力に対する感応性が強い体質なのかもしれませんね。あまり変わらない魔力量のミーナ様は何ともなかったらしいですから」
魔力の大きさに驚いたりはしたが、何か記憶に影響が出たり、ぼんやりすることはなかったな。確かにあの時、春奈ちゃんはほとんどしゃべっていなかった。ちょっとだけ詳しくサーミャに聞いてみよう。
「感応性が強いと魔力の影響を受けやすいとか、そういうのがあるの?」
「ええ。魔法を扱う際に有利になる点も多いですが、魔力の密度が高い場所に行くと、自身の限界を超えて魔力を蓄えようとしてしまって頭痛や軽度の記憶障害を引き起こしたりしますね」
そのようなことは日本で聞いた覚えがないな。サーミャがいた世界はこちらの世界よりも、魔力、魔法に関する研究が進んでいるようだ。
「そのようなことが……サーミャさんはお詳しいんですね」
「いえ、この時の魔法学の講義だけたまたま起きていまして……他に関しては寝ていたので基本的なこと以外は魔法学には詳しくないですね。魔法は感覚派なので……」
どこの世界でも授業中に眠くなるのは一緒らしい。懐かしいな。俺も高校の時はよく居眠りをしたものだ。そういえばもうすぐまた俺も高校に通わないといけないのか。ちょっといやだぜ。
「逆に考えてみると魔法に理論派みたいなのもあるんですかね?」
「あるみたいですよ? 詳しいことは知りませんが……」
理論派の魔法使いってなんか面白いな。俺たち地球人からすれば、魔力は感覚でとらえるものであるから感覚派以外には存在しえないと思うが、異世界の人間はそうではないらしいな。
俺とサーミャは人間じゃないけど。
「さて、そろそろ札幌駅に着きますね。もうすぐお昼ですけど、なに食べます?」
「私は食べ物についてもまだよくわかってませんから……ミーナ様に決めていただきましょう」
「えっ。じゃあ……ラーメン?」
少し前にも他の人とラーメンを食べに行ったが……何度食べてもかまわないからな。
「じゃあそうしますか」
「ラーメン、気になる響きですね。早速行きましょう」
こうして、俺たちはラーメン屋に足を運んだ。
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