青森ダンジョン・吸血公爵編

第32話 青森へ

 青函トンネル。前の俺もよく新幹線に乗って通ったが。しばらく期間が開いてしまった。なんならこの体になって初めてだし。


 弁当を食べながら青森への到着を待つ。昔はだいぶ時間がかかっていたそうだが、今は魔石などによるエネルギー改革が起きて、札幌から青森への所要時間が2時間を切った。詳しい話はよくわからないが、ずいぶんと便利な世の中になったものだ。


 ……? なんで今青森なのかって? とあるSクラス探索者から協力調査の依頼が来たためである。……名取さんに。というわけで今は4人+メイド兼スタッフ1人で青森に向かっているというわけだ。


「それで、なんで私たちも一緒なんですか? 連くん」


「春奈ちゃん、これにはね、山よりも低く谷よりも浅い理由があるんだよ」


 大した理由じゃないやんけ。


「連くんからすればぶっちゃけどんな相手でも余裕だし、異常があるダンジョンは映えるからねぇ~。せっかくだから再生数稼いじゃおうってわけ」


 さすが姉貴。こすい考えだ。


 ……にらまれた。悪かったって。


「事務所としてはまだ新興もいいところではありますし、いい考えだとは思いますけどね?」


「そうですかね? 危ない気もしますが」


「私が皆様をお守りいたします」


 レイセさんが珍しく口を開いた。確かにこの人、どちらかというと防衛系のステータスだし、姉貴よりも強いしなぁ。


「僕も君たちからは目を離さないようにするから、99.9%問題ないよ」


 100%じゃないんだな。


「100%じゃないのね?」


「何事にも絶対はないからね」


 ……この話がフラグにならないことを祈る。


◇◇◇


 やってきました青森。本州に降り立ったという感じがするな。


 ……嘘だ。別に大地の違いなんて俺にはわからん。

 

 土を何度も踏みしめている俺を春奈ちゃんがあきれた感じで眺めていた。ごめん、子供っぽくて。


 すると、どうやら俺たちを呼んだらしい探索者の方がいらっしゃった。


「ようこそいらっしゃいました。Sクラス探索者の神宮司 悠斗です。そちらの方々はセントラルライトの配信者たちですね? Sクラスレベルが名取さんの他に4人とはとても心強いです」


 俺、一応Bクラス程度だけど。


「私はAクラスなのでそこまでではないんですけどね」


「あれ、でもオーラというか、Sクラスに並ぶ気配はありますよ?」


 これ、もしかしてこいつの読み取る力が鈍いか? 一応ステータス見てみよ。


◆◆◆

名前:神宮司 悠斗

性別:男

年齢:18

種族:人間


レベル:653

攻撃:67640

守備:67640

魔力:67640

知力:67640

精神:67640

速度:67640


スキル:【深淵魔法】

◆◆◆


 レベル653!? ステータスの高水準もさながら、レベルの高さがすげぇ。魔物を殺して殺して殺しまくった先の強さ。


 身のこなしからして思っていたが、おそらくはステータスだけではない、死地を潜り抜け続けた強さが彼にはあるんだろう。


 ……そんな彼が名取さんに頼るなんて、一体何に遭遇したんだ?


「見ないうちにまた鍛えたね。一体どうして僕を呼んだんだい?」


 名取さんが彼に切り出した。俺も気になるな。


「青森ダンジョンの奥深くに、化け物が現れました」


 話によると、探索中に吸血鬼らしき敵にであったという。その吸血鬼には魔法、物理攻撃の一切が通じず、全速力で追っても逃げられたそう。


「あれが世に出たら厄介です。気配からして、おそらく攻撃のほうが得意なはずなのに、俺の攻撃を完封するほどの防御力を備えています」


「そいつはまいったな……レイセ、これは本気で心寧たちから目を離せないぞ」


 神宮司とやらが話を盛っていなければ、名取さんが警戒するほどの相手であるようだ。一体どんな化け物なんだよ。


 しかし、吸血鬼ね……。俺の頭に一つのスキルが思い浮かぶ。


【真祖吸血鬼】

・現在の位【姫】……etc


 おやぁ……?

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