閑話 『レイセ』

 パイモンの力を持った模擬悪魔が撃たれる十数分前。とある模擬悪魔、レイセは迷宮から与えられた自らの使命を全うするために、迷宮の外を目指していた。


『混乱を与え、その混乱を調停するものを作り、その成長を促す』


 それが課せられた使命。ミスティナ様を救うために、悪魔たちがとった手段。天使とは思想が違い決別したが、我が祖である悪魔はミスティナ様の意識を変えるという救済を行おうとしている。


 まずはこの次元の生命の位を向上し、天使に討たれないようにせねばなるまい。それが何の冗談か。


 レイセの目の前に1人の人間が現れた。


「君が今回のボス?」


「いいや? というか君、何者?」


 目の前に現れた人間。その力はおそらく序列の下の方とはいえ大天使にも及ぶ。


「僕は名取 連。普通の人間だよ」


「君が普通なわけないって」


 下手に戦闘を始めれば一瞬で消滅させられる。そう警戒したレイセは戦闘開始のタイミングを見計らって……。心が折れそうになった。


 余りにも、名取には隙が無さ過ぎた。どう転ぼうと、初撃で消滅する。その未来が避けられない。


「やめたやめた。私がどうしようと君には勝てないし、勝つことが目的でもないからね。君みたいなのがいれば使命が達成されたようなもんでしょ。世間話でもする?」


「やる気ないの? まぁいいんだけどさ。というか使命ってなに?」


 名取も話が通じないタイプではなく、レイセの言葉に剣を収めた。レイセには、あまりにも殺気や戦闘の意思がなさ過ぎたために、名取も奇襲はしないと踏んだのである。


「私たち模擬悪魔の使命は強い人間を作ること? かな。今、天使がいろんな世界を滅ぼして回ってるなかで、滅ぼされない者を作るためだよ」


「マジか」


 天使が世界を滅ぼして回ってる。その情報は名取が初めて聞くものだった。悪魔が人間に協力するといった事例は知っていたが。


「まぁ君ほどの力があるなら滅ぼされることはないよね。私の使命は終わったも同然だ! そこで相談なんだけど……使命が終わって命が残っていた以上、この命は無駄にしたくない。契約で君の下に着くから、従魔にしてくれない?」


 レイセは自分の契約の力を活かして、名取に取引を持ちかけた。君の下に着くから命は助けてくれ、と。


「従魔ってあれ? 召喚士的な」


「そうだよ」


 名取が思いの他乗ってくれそうで、レイセは歓喜すると同時に少し、二人の仲間に申し訳なく思った。あの二人は忠義に死ぬタイプだし。と、すぐに割り切ったが。


「よし、乗った! ああいうの、男としてちょっと憧れてたんだよね」


「じゃあ契約で!」


 レイセの力が発動し、名取とレイセの間にパスができた。レイセが名取に絶対服従。そういった繋がりである。


「君はこれから私の主様というわけだ。よろしく、主様」


「なんかメイド見たいだな」


 パスができたことによって主の願いを叶えるためなら思考を読み取れるようになったレイセは名取のメイドに関する情報を読み取った。


 そして。


「メイドってこういう感じかな?」


「おお! すごいじゃん!」


 自らの衣服をメイド服へと変化させた。


「敬語は使えないけど、メイドとして主様の元で頑張ろうかな。もえもえきゅん?」


「うん、それめっちゃいいと思うわ」


 すると、名取が何かを思い出したように真剣な表情へと変わった。


「急ぎの用事があった。意識の読み取りができるようになったんだろ? 家の情報やるから先に帰っててくれ。あ、これ鍵のスペア」


 なんで鍵のスペアを持ち歩いているのかと、自身の意識の読み取りに気づいていたのかと驚愕し、レイセは鍵を受け取る。


 するとすぐに、名取の体は光の粒子へと変化し、どこかへ移動していった。


「戦わなくてよかった……」


 名取の規格外さに驚いたレイセはもらった情報をもとに、名取の家を目指した。メイドらしく、いろいろ掃除とかでもしようかなと考えながら。


◆◆◆


 ギフトいただきました! ありがとうございます!


 少し話は変わりますが、最近17話で書いたオムライスに関するコメントを良く受けます。外に行ったときオムライスを二回ほど食べたのですが、どちらも中身が白米で、世間一般では中身が白米なんだと思ってました。私のミスでございます。おそらく17話は後日修正するでしょう。


 あとから友人に聞いたら私が食べたお店でもちゃんと中身はケチャップライスだったらしいです。


 なんで私は白米のオムライスを二回出されたんですか?


 


 

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