第25話 頂上の戦い
空気が、変わった。先ほどまでミザリーによって支配されていた場の空気が、一瞬にして、上書きされた。
存在感の桁が違う。圧倒的な力。ミザリーですら、俺達を足して挑んだとしても、彼に傷一つも付けられないだろう。
姉貴から聞いてはいたが、ここまでとは。
「じゃあ小手調べに……一発」
彼が空を殴ると、衝撃波が発生し、ミザリーに襲い掛かる。
ミザリーは防御を試みるも、体ごと飛ばされていった。
……あれは姉貴と同じ技だ。姉貴はステータスを10倍に強化してアレをやってのけているが、彼は素の身体能力だけでそれをやってのけた。
冗談抜きで、格が違う。
「『
いつの間にか、槍を持ったミザリーが名取さんに攻撃を加えようとしていた。
「んー遅いね」
「あなたが速すぎるのよ! はぁ!」
ミザリーの初撃、そして二段目の攻撃は名取さんにギリギリで躱される。
これは、名取さんが寸でのところで避けているわけじゃない。一切の無駄もなく、攻撃を躱している。
「『
「させませんよ!」
ミザリーは魔法を名取さんに行使しようとしたが、俺を守るように近くで待機していた春奈ちゃんに魔法を消失させられた。……いつの間に居たんだ?
「くっ!」
「いい力だね、お嬢さん!」
そして名取さんがついにその腕を動かした。その手にいつの間にか神々しく光り輝く剣が握られている。
刹那。
「!?」
ミザリーの体に、俺と春奈ちゃん以上の、裂傷が作られる。
「聞きたいことがあるから手加減させてもらったよ」
「ここまで力の差があるなんてね。あなたがいるなら安心よ。それで、聞きたいことって?」
えらく従順になったミザリーが名取さんの質問に答えようとする。
「今回、ここに来た模擬悪魔は何体?」
「私とレイセとアトラの三人ね」
あれと同格が後二人もここに来てるってことか!?
「ふーん。最後に言い残すことは?」
「ミスティナ様万歳!!」
だれだよ。というか、なんかすごい、既視感を感じるなその捨て台詞。
そして、ミザリーは名取さんの輝く剣によって切り裂かれ、消滅した。
改めて、圧倒的すぎる。あれだけのステータスを持ったものをこんな簡単に消し去るなんて。
「さて、二人とも、僕が来るまでよく耐えたね」
「救援ありがとうございます。名取さんが来てくださらなければ間違いなく力尽きていました」
「私からも、ありがとうございます」
春奈ちゃんと俺は彼にお礼の言葉を告げる。
「どういたしまして。いやー配信やっててよかったね二人とも。配信のおかげで気づけたよ」
あ、そういえば配信とかしてたなぁ。俺がコメント欄や同時接続数を確認すると、なにやらとんでもないことになっていた。
:無事でよかった!!
:ありがとう名取さん! マジでかっこよかった!
:これが日本で一番最強に近い男の実力かぁ
あ、珍しくミクさんがいない。仕事で札幌来たって言ってたし避難してるのかも。
まぁそれはいいとして。同時接続数が20万を超えている。やべぇ、めっちゃ見られてるじゃん。
緊張するなぁ。
「ああ、そういえば、僕ももうすぐ配信者になるんだよ。聞いてたかな? その時はコラボ、よろしくね」
「え、あ、はい。よろしくお願いします?」
「よろしくお願いいたします」
そういえば姉貴が言ってたような言ってなかったような。
事務所同じになるんだっけ?
:マジで!?
:名取さん配信やんの!?
:絶対見るの確定で草
「さて、他の悪魔は心寧と土佐霧さんがなんとかしてくれるだろうし、ゆっくりかえろうか」
どうやら俺達を守りながら帰ってくれるらしい。正直、春奈ちゃんも俺も満身創痍というに近いからな。
「助かります」
「なんのなんの。さて、コラボになった時、どんなことをするか相談でもしようか」
名取さんとの帰り道は、信じられないほど平和なものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます