第26話 一騎打ち

 こいつの攻撃を受けちゃまずいなと思いつつ身構えていると、いつの間にか戻ってきていた春奈ちゃんがその剣で攻撃を仕掛ける。


「そんな攻撃、当たると思ってるの?」


「くっ!?」


 しかし、その攻撃はミザリーと名乗った悪魔が片手で防いでしまった。剣をつかみ、剣ごと春奈ちゃんを俺の方に投げつける。


 俺は春奈ちゃんを受け止め、支える。


「……ありがとうございます」


「当然の事をしたまでです。それより今は……」


 あの悪魔をなんとかしなければ。


「二人まとめてかかってきなさい。じゃないと相手にならないわよ」


「言われなくても」


「そうしますよ!」


 俺と春奈ちゃんがほぼ同時に動きを開始する。


 春奈ちゃんは剣を構え前に、俺は魔法の用意をしながら後方に下がる。


 が、しかし。


「後衛から潰すのが、定石よね」


 俺のすぐそばに一瞬にしてミザリーが現れた。馬鹿な。俺の速度のステータスは今もうすでに15000を超えてるんだぞ!? それが一切見切れないなんて。


 というかこの状況まずいのでは?


「みいなさん!!」


 春奈ちゃんが俺に呼びかける声が聞こえる。悲壮に満ちたその声を聴いたその瞬間、悪魔らしく、無慈悲なミザリーが魔法を行使する。


「『災厄の光線ディザスター・レイ』」


 圧倒的な魔力密度を持ったその光線は俺の【種族特性:吸血姫】に内包された【全属性魔法耐性】によって阻まれてなお、俺の体を軽く吹き飛ばし、さらに多数の裂傷をつくりだした。


 俺の体は壁まで弾き飛ばされる。体が軽いのも問題か……。


 しかし、めっちゃ痛い。なんでこんな痛いんだ? あと、裂傷は小さいはずなのに、全く再生が進まない。なぜだ?


「そこから動かないこと。『断裂光フラクチャー・オプティカル』」


 追撃として、俺の足に光の斬撃が飛んでくる。俺の両足に大きな傷ができて、血が流れ出す。


 痛い。泣き出しそうなほど痛い。再生もしないし。なんで? まぁ……切断されなかっただけましか。


「みいなさん!」


 俺のところまで春奈ちゃんが来てくれた。


「よかったです、生きてますね……。意識はありますか……?」


「え、ええもちろん。ただ、足がやられちゃって動けそうもないです」


 魔法を使っての再生も試みたが、なぜだか進みが遅い。少なくても15分はかかりそうな進度である。


「魔法での再生は可能でしょうか」


「進度はとても遅いですが……」


 と、正直な言葉を継げると、春奈ちゃんは安堵の表情を浮かべた。


「でしたらそこで再生に専念していてください。私が、あれを討伐します」


「わ、わかりました」


 なんというか、悪魔に対する怒りの感情が見て取れる。


「あら、話合いは終わった? まぁ、もうそこのちっこいのは動けないでしょうから、話合いなんて意味ないわよ」


 かっちーん。誰がちっこいだ誰が! 俺が怒りのままに攻撃魔法を発動しようとするが……。


 発動しない。なぜだ。


「あら? 攻撃魔法は今発動できないわよ? 私の能力で回復以外の行動は封じられてるからね。回復速度も遅くなってるわよ。つまり、あなたは私がこの剣士と戦うのを見ているしかないってこと。言ったわよね? そこから動くなって」


 俺は、どうやら自身の治療以外できない状況らしい。見てるしか、ないのか。


「らしいです。回復に集中してください。私が、倒しますから」


 春奈ちゃんは俺にそういった後、前にでて、剣を構えた。


「さ、一騎打ちと、行きましょうか」


 ミザリーは、少しうれしそうにそういった後、禍々しい光の剣を顕現させた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る